第193話

「よっ!早いな?」





総長専用のソファーに座る翡翠が俺を見てそう言った。






「あぁ、ちょっと話あるんだけど?」




俺は頷きながら足を進める。







「話?」




翡翠は不思議な顔をしながら手元にあった煙草に火をつけた。






「ま、な?」




そう言いながら俺専用のソファーに腰を降ろした。






ドキドキする心臓。







なんだか、らしくねぇ。








翡翠に許可とかってより、きちんと話しておきてぇだけなのに・・・。







なんだよ、この緊張感。







大きく息を吸って、静かに吐き出す。








視線をゆっくりと翡翠に向ける。








「お前が改まるなんて珍しくねぇ?」




そう言いながら、白い煙を吐き出した翡翠。







「ま、俺だってそんな時ぐらいあんだよ。」





俺をなんだと思ってんだよ、こいつは。








はぁ・・・と溜息を吐く。










「で、話って?」





翡翠の意地悪そうに笑っていた顔が真剣な表情に変わる。








ゴクリと唾をのみ込み、真っ直ぐと翡翠を見た。








こいつの威圧感はすげぇ。





やっぱ、そこは総長なんだと思った。







「あぁ、実は・・・。」






話そうとすればするほど、喉がカラカラに乾く。







俺らしくねぇ。






「・・・・・。」







言葉に詰まった俺を無言のまま翡翠は見つめる。







きっと、俺の言葉を待ってる。







翡翠はそう言う奴。






真剣な話を茶化したり、話の腰を折ったりしねぇ。







たとえどんな相手でも、話そうとしてる奴のタイミングを失わせたりしない奴なんだ。









俺は数回小さく深呼吸する。









「実は、その・・・付き合いてぇんだ。」





やっと出た言葉はなんとも陳腐な物。






主語と述語がなってねぇ。






自分でも滑稽に思えてくる。







「はっ?」




うん、その反応で間違いねぇ。






翡翠の間抜けな顔って貴重なんだけどよ?

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