第186話

でも、珊瑚には聞いて貰いたかった。






そして、馬鹿な真似は止めろと叱って欲しかったんだと思う。








「軽蔑されるかも知れねぇ。それでも・・・聞いてくれるか?」




思わず出た弱弱しい声に自分でも驚いた。






「うん、聞くよ。」




あぁ、お前の笑顔は陽だまりみてぇだな?








俺はゆっくりと話し始める。








「俺は物心ついた時から母さんと二人暮らしで。それでも幸せだった。でも、母さんが過労で急死した。」




俺の話に珊瑚が顔を歪めた。





お前がそんな泣きそうな顔すんなよ。



「亡くなる前に父親の存在を聞いた。俺が母親のお腹にいる事を知らずに別れた恋人がいたと。俺が一人になるのを心配した母親が、その人を頼れと教えてくれたんだ。」




そう、母親はその人に対して恨みを言う訳でもなく、俺の心配だけをしてこの世を去って行った。






「俺は、母親に言われた通りにその人を探して連絡した。意外にも簡単に俺の存在を認めてくれて援助を申し出てくれた。俺が二十歳になるまで生活面と学業面は面倒見てくれることになった。」




俺はそこで一息つき。





目の前の珊瑚の瞳は今にも溢れ出そうなほど涙を蓄えていた。






「そこまでは良かった。俺は父親の家を訪れてそこに居た小学生ぐらいの義弟を見て逆上した。両親も金もあってぬくぬくと育ってるはずのそいつが、青い髪をして親に反発して糞生意気にグレてやがった。俺の存在も知らずに、俺がどんな苦労してきたかも知らずに・・・。」





膝に乗せた両拳をギュッと握りしめる。






こんなの逆恨みだって分かってる。






でも、ぶつけようのない怒りをどうしても弱い義弟に向けちまう。







俺はこんなにも弱い。








「もう一人の弟をたてにとって、俺はそいつをストレスのはけ口にして殴ってた。馬鹿げてるって自分でも分かってるのに止められねぇんだ。」




馬鹿な事だって、意味の無い事だって分かってるのに・・・。

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