第185話

空気が読めるのか、妹は俺達から離れて公園の遊具で遊び始める。




あいつはチラチラと妹を見ながらも俺の手当てをしてくれる。




一通、血をふき取りと鞄からバンソーコーを取り出して貼ってくれた。




「サンキューな、助かった。」




素直にそう言えた。




「ううん。たいした怪我じゃなくてよかった。」



「俺は柊馬。おまえは?」



「私は珊瑚。」



「綺麗な名前だな。年は?」


「17歳。」



「一個上か?」



「柊馬は翡翠と同じ年なの?」


「あぁ。」



「そうなんだ。」



優しく笑うお前の笑顔を自分の物にしたいと思った。




「それより、おまえ。こっちに来る途中に膝を怪我しただろ?」



「あ・・・バレてた?」



舌を出して珊瑚が笑う。




「貸せ!」


あいつの持っていたタオルを奪い取ると、綺麗な部分を探して、珊瑚の膝の血を拭いた。




「ありがとう、柊馬。」



頬を赤くした珊瑚が愛おしかった。




まだ2回しか会ってない女をそんな風に思えた自分が不思議で仕方なかった。





「バンソーコーまだあるか?」



俺がそう言うと、珊瑚は鞄からバンソーコーの箱を出した。




「箱で持ち歩いてんのかよ。」



って、突っ込みながら傷口に貼ってやった。





その後、2人でベンチに座って色々な話をした。



珊瑚は俺の怪我の事をとても気にしていた。



「殴るのも、殴られるのも痛いよね。傷は治るけど、心の痛みは治らない。殴る度に、殴られる度に、心も傷つくんだよ。だから、無益な争いはしないで・・・柊馬。この拳は、大切な物を守る時だけに使って。そうじゃないと、あなたが壊れてしまうわ。」



珊瑚はそう言って、俺の両手を自分の手で包み込んだ。







この時の珊瑚の言葉は今でも俺の心に残ってる。





人の痛みを感じる術を教えてくれた珊瑚。






だからかもしれない。







俺が逆恨みで義弟に暴力を振るってる事を話そうと思えたのは。


















「珊瑚、聞いてくれねぇ?」



そう言えば、




「私で良いなら聞くよ。何も出来ないけど。」



今から話す事で、お前のその微笑みは消えるかもしれねぇな?





俺の中にそんな恐怖が生まれた。

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