第182話

それを地面に突き刺したのは気まぐれ。






昨日、少しだけ良いことがあったから。






今日はまだ気分が良い。




やっぱ、あいつに会ってから俺はどこかおかしい。







「蠍の頭に言っとけ。今度俺を狙うならもっと大人数を集めろと。」



恐怖を瞳に宿した男にそう言い捨てると、俺はバイクに向かった。







口から出た血を特攻服で拭うと空き地を後にした。











今度こそ自宅へ帰ろうとアクセルを吹かしてるのに、頭がぼやけてくる。





ツツーッと額を伝って流れ落ちてくる赤い液体。







「ヤベェな。さっきやられたやつか?」





頭を鉄パイプで殴られたことを思い出す。






ふらつく運転に、危機感を感じて目についた公園の入り口にバイクを停めた。







「チッ・・・うぜぇ。」




そう吐き捨てると、公園のトイレを目指す。




血を洗い流して、少し止血をするしかねぇ。






ふらつく足取りでトイレに向かう。






でも、俺の脚はトイレに向かうまでに停まっちまう。






仕方なく側に在ったベンチに横になった。






少しだけ休憩だ。







昼間の公園には似つかわしくない俺の姿を見て、親子連れが遠ざかって行く。





「はぁ・・・だよな?」



自嘲的な笑みが漏れる。






頭から血を流す特攻服を来たヤンキーなんて、相手にしてくれる奴なんていねぇよな?






俺は眩しい太陽に目を細めながら空を見上げた。







遠くに聞こえる子供達の声、風の音。





こんなに開放的な空間に、血だらけの俺。






なんか、馬鹿みてぇ。





「な~にやってんだろうな?」






ポケットに入ってる携帯で、誰かに連絡を取る事も出来たが、なぜかしなかった。




今でもそうしなかった理由は分からない。





ただその時は、雲が流れるのをぼーっと眺めていた。

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