第179話

背中越しにバタバタと駆け寄ってくる足音と、





「よ、迎えサンキュな?」



軽やかな翡翠の声。







「あぁ、気にすんな。姉妹か?」





俺は振り向く事もなくそう聞いた。






「あぁ、姉ちゃんと妹。可愛いだろぉ~、やらねぇぞ。妹は俺だけのモノだ。」



メロメロな顔をする翡翠に、



「はぁ~。」



と溜息を吐いた俺。






妹なんかに、興味ねぇよ。








俺は無言のままバイクに跨るとエンジンを掛けた。





「なんだよ!」



そんな俺に翡翠は唇を尖らせて怒る。






何を言って欲しかったんだよ・・・うんざりとした顔で振り返る。





「ってか・・・俺はロリコンじゃねぇし。小学生に興味ねぇよ。」



「なんだ、お前には妹のよさが分かねぇんだ。『おにいちゃ~ん』って、すげ~可愛いんだぞ。」




分かりたくもねぇけどな?




「マジ、お前はシスコンだな?」



呆れて笑っちまった。





「シスコン万歳だ!」



「ありえねぇ~。」




そう言いながらも、俺は仲の良い翡翠達がちょっと羨ましくも思えた。





今もなお、俺達に手を振り続ける姉妹を視界の端に捉えて、翡翠を乗せたままバイクを走らせた。










これが珊瑚との初めての出会い。






互いに名前を名乗る事もしなかった。








これが運命の出会いだったと今なら解る。









俺の心の中には確実に何かの光が灯ったのだった。







それに気付くのはもう少し後の話。

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