第173話

一度に長時間眠れねぇ俺は、起きては寝てを繰り返し夕方を迎えた。





シャワーを浴びて、戦闘服に着替える。





白いさらしを胸元に巻いて、黒い特攻服を羽織る。





それが俺の戦闘服。





花龍幹部で、切り込み隊長。





俺にお似合いの役職。





何にも恐れねぇ俺は、誰よりも先に敵陣地へと切り込んでいけるんだ。







独りの俺には失うモノがないから、何にも怖くねぇ。









髪形をセットして、お気に入りのコロンを付けた。






俺の地位と容姿に惹かれた馬鹿な女どもは、これで騒ぎ出す。






「ふっ・・・今日も暴走の後は入れ食いだな?」



鏡に映った自分に話しかける。





意味のない行為に、くだらない女達。






それでも、寂しさを紛らわせる為に俺は同じ事を繰り返す。





自嘲的な笑みを浮かべてから、テーブルに乗せてあったバイクのキーを手にした。







迎えの時間にはまだ早いけど、少しぶらりと海岸線を一人で流してみようと思った。








部屋を出て、駐輪場に停めてあったバイクに跨る。







もちろん今日はヘルメットなんて被らねぇ。







キーを差し込んでエンジンをかけると、爆音が辺りに響いた。








「コンビニでも寄って腹ごしらえでもするか?」




独り言をつぶやいて、地面を蹴り上げた。







スムーズに動き出すバイク。







薄暗くなった道をすり抜けて、目的地を目指した。













フルスロットルで駆け抜ける海岸線。






誰も居ない空間。







クリスマスイヴに、わざわざこんな寒い場所に来る奴なんていねぇよ?と自分を嘲笑う。







アクセルをあければエンジンが大きく唸る。







この場所に俺は存在してると叫ぶように。







誰か、俺を見つけてくれ。







1人は苦しい。





1人は寂しい。







なぁ・・・誰か、俺を見つけ出してくれ。









心の叫びをエンジン音に込める。





エンジン音は俺の心の悲鳴と共鳴する。









壊れる前に誰か、壊してくれ。

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