第174話

バイクを適当な場所に停めると、防波堤に腰を掛けた。




北風が吹くその場所で、かじかむ手でコンビニのおにぎりを頬張った。





もうどれぐらい人の手作りを食ってねぇのかな?






冷たくて味なんてしやしねぇ。






それでも、今を生きる為に腹に流し込んでいく。








孤独が辛くても、俺は生きていくしかねぇんだ。









「暴走が終わったら憂さ晴らしでもするか?あのチビを呼び出して。」





片親しか血の繋がらない弟の顔を思い浮かべた。






女の上で腰を振るより、あいつをぶちのめす方が気がまぎれるかもしれねぇな?





暗い海を眺めながらそんな事を考えていた。






弱い相手を脅して殴りつけて、最低な行為だって分かってる。






あいつには罪なんて無い事も。







それでも、何も知らずにぬくぬくと育ってきたあいつを初めて見た時、自分の惨めさを思い知ったんだ。







たとえ半分とはいえ、同じ血が流れてるあいつは何の苦労もなく裕福で。






好きなように生きてた。






母親と2人で苦しい生活をしてきた俺なんかとは雲泥の差があった。







逆恨み、そう言われればそうだと言える。






それでも、自分を保つ為に俺は非道な行為を繰り返す。






誰か止めてくれ!






心の中で叫びながら。









おにぎりを食べ終わり、缶コーヒーを飲み干した。






お腹は満たされた。






それでも、どこか隙間が空いたままの俺。









ふっ・・・と自嘲的笑みを浮かべてから、ズボンのポケットから取り出した携帯で時間を確認する。








「そろそろ行くか?」




すっかり冷えた体を動かす為に大きく伸びをしてから立ち上がった。





防波堤から飛び降りて、傍に在ったゴミ箱にごみを投げ入れる。








風に揺れた特攻服を翻しバイクに跨った。









さぁ、長い夜の始まりだ。








俺の居場所に向かう為にバイクを操る。







花龍が俺の存在理由。




花龍のメンバーが唯一の仲間。








孤独に苛まれても、落ちてしまえないのは仲間と居場所がまだあるからなんだと自覚している。

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