第159話
「兄ちゃん、俺も兄ちゃんと頑張る。」
要がいつの間にか隣に立っていた。
「うん、これからは現実と向き合って行こうな?」
「もう、逃げてばかりいられないね?」
「母さんに約束したからな?」
「ホントだ。」
2人で顔を見合わせて笑った。
仮面じゃない、本当の微笑み。
墓石に供えた花がゆったりと揺れる。
母さんも微笑んでくれてる気がした。
『ありがとう。』
風に乗ってか細い声が聞こえた。
「えっ?」
辺りを見回す俺と、
「はっ?」
同じように辺りを見回す要。
お互いに目を合わせて頷く。
「今、聞こえたよな?」
「う・・・うん、兄ちゃん。」
風の悪戯か、それとも錯覚か、それとも・・・。
あの声は確かに母さんの声だったような気がする。
優しくて、耳障りの良いソプラノ。
もう一度だけ聞きたいと、耳を澄ませてみたけれど、あの声はもう聞こえる事は無かった。
安心したような声だった。
今日、ここに来た事を良かったと思えた。
母さんが俺達を待ってくれてたんだと、自分勝手な解釈をする。
「要、また来ような?」
と微笑めば、
「だね?今まで来なかった分、沢山来たいね。」
と要も微笑んだ。
あんなに戸惑っていた事が、こんなにもあっさり解決するなんて。
悩んで悩んで、心を痛めた。
弱い俺達は、現実と向き合おうともせずにずっと逃げてきた。
今日、ここに来て向き合えた事はきっとこれからの糧になる。
母さんと言う存在が再び俺達の中で暖かい思い出に変わった。
どちらからともなくその場にしゃがみ込み、両手を合わせる。
今度は心の中で語りかける。
この先の未来を明るいモノへと変えるよ。
母さんの子供に生まれてきて良かった。
産んでくれてありがとう。
俺達はもう逃げないよ。
父さんとも、少しずつ向き合うよ。
だから、どうか空の上から見守っててね。
・・・お母さん。
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