第158話

残された俺と要は仕方なく手渡された蝋燭と線香を墓前に供える。







火をつけると、香の香りが漂う。






揺ら揺らと立ち昇る白煙。








「この後、どうすんだっけ?」



要が苦笑いを浮かべる。





「そりゃ、水かけるんだろ?」



傍に在った柄杓と手に取ってみる。






2人で立ち上がり、代わる代わる水を墓石にかけた。







なんとも不思議な気持ちだった。









景色一望で来て、心地よい海風が吹くこの場所に母さんが居る。








母さんが大好きな花達に囲まれて眠る。







「ねぇ、母さん。今は幸せ?」



自然とそんな言葉が出た。




要はそんな俺を少し驚いたように見たけど、一歩下がって墓石と俺を2人きりにしてくれた。







「今まで、ずっと来なくてごめん。」



頭をゆっくり下げる。





「本当は会いに来たかった。でも、現実を見るのが怖くて来ることが出来なかった。母さんはこんな薄情な息子、もう知らない?なんて思ってるかな?何も出来なくてごめんね?助けてあげれなくて・・・ごめんね?俺がもっと大人だったら、母さんを死なせずに済んだかもしれない。」



自然と流れ落ちる涙。






母さんが亡くなってから一度だって流した事の無かった涙が、自然に湧き上がってきた。





ツンと痛くなる鼻先。






「兄ちゃん、自分を責めるなよ。」



要の声が震えてた。




振り向かなくても解る。





要も涙を流してる事。






「これからはさ。ちゃんと向き合うよ。愛情が欲しくて無茶な事もしちゃった。でも、それじゃダメだって気づかせてくれた仲間がいるんだ。今日、ここに引っ張って来てくれたのも、その子。見えた?可愛い子だろ?残念ながら俺の彼女じゃないんだけどね?でも、とっても大切な子なんだ。」




俺は穏やかな心で墓石に話しかけ続ける。




「母さん、あの人は・・・父さんは大切にしてくれてる?琥珀が言うんだ、愛されてるって。だから信じてみようと思う。父さんが母さんを愛してるって事を。まだ、あの人と向き合う事は出来ないけど、一歩ずつ歩み寄っていけるようにするよ。」




俺がそう言った時、心地よく流れていた風が俺の周りに渦巻いた。





まるで母さんが抱きしめてくれたかのようだった。

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