第157話

花を供えるのと、雑草抜きが終わった頃、水の入った桶を持って要がやってきた。






「お待たせぇ~!」



やたらと明るい声。






顔にはもちろん笑顔の仮面を張り付けてる。





要だって、母さんの事は辛い記憶になってしまってる。







「ありがとう!要。」




琥珀は、俺や要が笑顔を張り付けてる事に対して何も言わずに、普通に接してくれる。






それが琥珀の優しさなんだと思う。






要は桶と柄杓を地面に置くと、母さんの墓をしげしげと見つめた。






「すっごい墓じゃん。親父もはりこんだね。」



「綺麗なお墓だよね。」



要の言葉に琥珀が微笑む。





「死んでから大切にすんなら、生きてるうちに大切にしてやれば良かったのに・・・。」




要の本心がぽろりと漏れる。





「・・・・・。」



切なげに眉を下げた琥珀。





「・・・うん、そうかもね?」




なんて苦笑いを浮かべた俺。







琥珀はそんな俺達を視界に捉えながらも、自分バッグを漁りだす。








「これ、お線香と蝋燭ね。良かったら使って。」



綺麗な入れ物に入ったそれを手渡してくれた。





「えっ?あ・・・うん。」



用意周到じゃん、なんて思ってると、




「昨日ね、珊瑚ちゃんのお墓参りに行ったから、ちょうど持ってたんだ。」



なんて肩を竦めて笑った。







「さすが琥珀。」



要はがばりと琥珀の背中に抱きついた。





「きゃ・・・危ないじゃん。」




前のめりにつんのめる琥珀の焦った顔。





「要、何やってんだよ?琥珀がこけたら怪我すんじゃん。」




さっきのシリアスはどこに行ったんだよ。






まったく相変わらず緊張感ないね。




はぁ・・・と溜息を吐きながら、琥珀に抱きつく要をベリッと剥がす。




「大丈夫、琥珀?」



「うん、大丈夫。それより要も蘭丸もここに座って。」




琥珀に促されて墓石の前にしゃがみ込む。






「私は向こうで待ってるね。2人はたくさん話してあげて?」




琥珀が指さした先には小さな休憩所の様な場所。




俺と要の肩をポンポンと叩くと琥珀は有無も言わせず立ち去って行った。

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