第156話
初めて来た母さんのお墓は、霊園でも一番小高い丘の上に色とりどりな花に囲まれて佇んでいた。
「特等席だね?」
琥珀は、辺りの景色を一望しながら、可愛く微笑む。
「うん。確かに特等席だね。」
口角を上げて頷いた。
「それにお花が沢山だし、お墓の手入れだって行き届いてる。おじさんがきっと大切にしてるからだね。」
あいつが大切に?
本当にそうだろうか?
あいつは母さんを今も愛してるだろうか?
母さんを死に追いやった原因はあいつなのに・・・・。
確かに母さんが亡くなった時は、あいつだって相当落ち込んでたけど。
本当にそうだろうか?
女遊びを散々した挙句に、母さんを壊したあいつ。
もう死んでしまった母さんの事なんて、今は何とも思ってないんじゃないのかな?
「・・・・・。」
「ね、蘭丸。」
琥珀は無言のまま墓石を見つめる俺の服の裾をチョンチョンと引っ張った。
「ん?ごめん。ぼーっとしてた。」
ヘラリと笑顔の仮面をかぶる。
「愛してなきゃ、こんな風に綺麗に保たれてないよ?お花だって季節替わりに植え替えられてるはずだよ。いつもお花で囲まれてるように。」
琥珀の言葉はすんなりと心に入り込んでくる。
「愛してるのかな?」
首を傾げた俺に、
「うん。おじさんはきっと今も愛してる。」
はっきりとした言葉をくれた。
母さんは今も愛されてるの?
「・・・・・愛されてたら・・・いいな。」
俺はささやかな望みをぼそりと口にする。
もちろん琥珀には聞えてない。
ただ、綺麗に光る御影石をなんとなく眺めていた。
「ほら、ぼーっとしてないでお花供えよう。分けて供えないとダメだね?」
琥珀に促されて、手に抱えていた花束を手渡した。
「そうだね。」
「私はお花を分けるから、蘭丸は墓地の雑草でも抜いてて。」
「あ・・・うん。」
広い墓地に足を踏み入れ、申し訳なさ程度に生えた雑草を抜きにかかる。
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