第152話
倉庫前に着くと、要はもう来ていてタクシーに乗った俺達を見つけると笑顔で手を振った。
要を乗せて再び走り出すタクシー。
「どちらまで?」
と聞かれ、
「蘭丸、何処の霊園?」
と、隣の琥珀が俺を見た。
言わないと言う選択肢はないのだと悟。
長い溜息を吐き出してから、意を決して口を開く。
「海浜メモリアルまで。」
運転手にそう告げる。
「かしこまりました。」
運転手は頷くと進路を転換する。
タクシーは母親の眠る墓地へと向かう。
「ねぇねぇ、墓地でデート?」
助手席に乗っていた要が振り返る。
「うん、そうだね。墓地でデート。」
琥珀は楽しげに笑う。
俺は内心落ち着かない。
一度も訪れた事のない場所。
怖くて目を背け続けて来たんだ。
「急な呼び出しで驚いた。久しぶりに会うけど、琥珀は元気だった?相変わらず可愛いねぇ。」
おどけて話すのは要なりの気遣い。
リクが居なくなって琥珀が辛い思いをしていた事を知ってるから。
「うん、元気だよ。皆のおかげ。」
琥珀は頷いて笑う。
皆のおかげなんかじゃないよ。
琥珀は十分独りで頑張ってきたよ。
七瀬の事を考えて、傍で支えたいと言った七瀬を突き放した琥珀。
傍にある優しさに縋り付けばいいのに、それをせずに自分の足で一歩踏み出した琥珀は本当に凄いと思うよ。
この半年、彼女の中で様々な葛藤があったはずなんだ。
ううん、半年なんかじゃない。
お姉さんの事や柊馬の事だって。
失った記憶を取り戻した事で辛い思いを抱えているはずなのに。
それでも今、こうやって笑うのは琥珀の強さだと思う。
本当は泣き虫で小さい女の子なのに、大きく見えるんだ。
俺は隣に居る琥珀を見つめる。
その強さを少しは見習わないといけないよね?
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