第150話
「そっかぁ・・・分かった。」
琥珀はそれだけ言うと店員に近づいて行く。
「すみません、お花を欲しいんですけど。」
「はい、どんなお花ですか?」
愛想の良さそうなおばさん店員。
「えっとぉ・・・この中のお花、少しずつ全部ください。」
そう言って指さしたのは花が沢山並べられたガラス張りの温室。
「えっ?は・・・はい。」
驚く店員と、
「えっ?琥珀?」
驚く俺。
そんな事お構いなしに、
「お願いします。」
店員は複雑そうに眉を寄せながらも、琥珀に言われたとおりに少しずつ花を取り出していく。
琥珀をそれを満足げにみていて。
「ね、どうするの?」
俺は琥珀の腕をチョンチョンとつついた。
「はっ?お墓参りだけど?」
当たり前でしょう?なんて笑う。
「・・・・・。」
墓参りって・・・もしかして母さんの?
母さんが亡くなってから一度だって踏み入れた事のないあの場所へ行くの?
自分がもっとしっかりしていたら、母さんを助けられたんじゃないか?って思うと怖くて行けなかった。
弱虫な俺は、母さんに合わせる顔なんてないんだよ。
立ち直ったように思えても、心の奥底じゃあの光景が蘇り、母さんに忘れられた事実が突き付けられるんだ。
俺は知らず知らずに拳を握りしめる。
「行かないなんて言わせないし。」
真っ直ぐな瞳で俺を見る。
「・・・・・・。」
琥珀はまるで心の中を見透かしてるようだった。
「そんな顔してるなら行けばいいんだよ。」
「そんな顔?」
「うん、自分を責めてるような顔。今日会った時から同じ顔してるよ?」
自分では普通の顔をしていたつもりだったのにな。
「でも・・・琥珀、俺・・・。」
そう言いかけた時、
「あ!要に連絡してね。そうだなぁ・・・30分後に銀狼倉庫集合ね?」
琥珀は俺の反論なんて聞かないとばかりに話す。
ちょっと待って・・・。
ホント、無理だよ。
眉を下げる俺。
向き合う勇気なんてないんだ。
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