第144話
病院につくとうちの古株の家政婦が青ざめた顔つきで俺の到着を待っていた。
「蘭丸様、奥様は右奥の手術室に入られてます。ご案内します。」
俺の顔を見るなりそう言いながら駆け寄って来た。
「うん、頼むよ。」
笑顔を貼付けると家政婦の後に続いて小走りする。
こんな事態でも作り笑いは出来るらしい。
心臓が飛び出しそうな程、ドキドキと脈打つ。
心配で仕方ない癖に、心のどこかで客観視してる自分が居た。
もしも・・・。
いや・・・まさか。
母親がこの世から消えるはずがない。
要から詳しい事を聞いてないせいか、現実味を帯びない。
家政婦に案内されて到着した院内奥の手術室前。
ランプは赤く点灯したままだった。
手術室前の椅子には頭を抱えて震える父親の姿。
俺達の足跡さえ、耳に届いていない様子だった。
「お兄ちゃん。」
父親から少し離れた場所に座っていた要が俺の姿を見つけて立ち上がると駆け寄って来た。
「要、お母さんはどうしたんだ?」
赤く潤んだ要の瞳を見据えてそう尋ねた。
「・・・そ・・・それが、俺にもさっぱり。お母さんの叫び声が聞こえたと思ったら、廊下を走る音が聞こえて・・・それで、父さんの叫ぶ声と何かがぶつかる音がして、お・・・お母さんが一階の軒下に血まみれで・・・。」
要の体はガタガタと震え出す。
きっと母親は酷い状態だったに違いない。
「もういいよ、要。思い出さなくていいから。さ、こっちに座りな?」
要の肩を両手で掴むと、長椅子に座る様に促した。
「・・・で・・・でも、お兄ちゃん。」
上目遣いに見上げた要に、優しく微笑む。
「ホントにいいんだ。だからね、少し目を閉じてるといい。」
俺の言葉に要は頷いて目を閉じた。
案内してくれた家政婦に目配せすると要を任せて、父親の元に向かった。
真相を確かめる為に。
どうしてこんな事態になったのかを聞く為に。
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