第134話

要と2人で顔を見合わせる。




「お兄ちゃん、お母さん来ないね?」



と不安げに俺を見る要の手を引いた。




「リビングじゃないかな?行ってみよう。」





可笑しいな?と思いながらも、俺と要はランドセルを担いだままリビングへ向かうべく廊下を歩き出した。






数人の家政婦達とすれ違う。




皆一様に俺達を見てバツが悪そうに会釈した。





何だよ?




今日は可笑しくないか?





俺の胸の中にモヤモヤしたものが湧いてくる。







「お母さん。」





そう呼びながらリビングのドアを開ける。






でも、そこにも母親の姿はない。






「んだよ?どこに行ったんだろう?」





そう思いながらも、リビングのドアを閉める。




「・・・・。」



不安げに瞳を潤ませる要の手を強く握る。




「心配すんな。俺達が帰ってきたことに気づいてないだけだよ。」



俺は上手く笑えていただろうか?




「うん、お兄ちゃん。」



要も握った手を握り返してきた。





「あ!そうだ、あそこかも知れない。」





俺はある場所を思い出す。




「あ!あの部屋だね?」




要も思いついたらしい。





お母さんが大好きな大きなグラウンドピアノを置いた白い部屋の存在。





要と俺を傍に座らせて、いつも引いて聞かせてくれていた。






もしかしたらピアノを弾いていて気づかないだけなんだよ。




そう自分に言い聞かせた。





そうでもしないと、目に見えない不安に押しつぶされそうだったから。

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