第133話

俺と要の母親は俺達を残して自殺した。







それは俺が中1、要が小5の時だった。





原因は度重なる父親の浮気で、精神を病んだ末の自殺。




ガキだった俺には母親の真意は今も分からないけど。





ただ、純粋に父親を愛していたんじゃないかと思う。




だからこそ、父親の仕打ちに耐え切れなくなって精神を病んでしまったのだろう。





俺達息子の事なんて考える事が出来なくなってしまうほど。






あの頃は、俺達を置いて逝ってしまった母親を恨みそうになったけど。





今なら母親の気持も分かる。





何もかも見えなくなるほどに、人を愛してしまったのだと。











俺が物心ついた頃には、父親にはすでに愛人がいた。




隠す訳でもなく、愛人をはべらす父親に嫌悪していた。




母親はピアノ界では有名なピアニストだった。





容姿端麗、家柄もよく、気立てが良くて優しい人だった。




誰からも愛されていたんだ。





そんな母親に一目ぼれした父親は、アタックし続け手に入れたらしい。





初めは幸せな夫婦生活だった。





それが急転したのは母親が俺を身ごもった頃から。





女としてではなく、母になってしまった女に愛想を尽かした父親。





ホント、今から考えても自分勝手で最低な男だと思う。






母親には指一本触れなくなり、若くて綺麗な女に走り出した父親。






金にモノを言わせて外に何人も愛人を囲った。





ひい爺さんの代からの総合商社を次いでいた親父は有り余る財力を湯水のように使っていた。





あの人も、寂しい人だったのかもしれない。







度重なる浮気にも母親は涙しながらも耐え続けていた。





でも、それが壊れたのはあの日・・・だった。











俺が小学校6年の時だった。





学校が終わって、いつもの様に自宅に帰った。




「ただいま。」




そう言えば、



「おかえりなさい。」




いつもそう言いながら声を掛けてくれる母親の声が聞こえなかった。






家政婦を何人も雇うような大きな家だったけど、子供達の出迎えだけは母親は欠かさずやっていてくれたのに、その日に限っては母親の気配すら感じなかった。

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