第100話

今こうして、傍に居られるのはきっと奇跡。







神様が聞き入れてくれた俺の願い。








琥珀が手に入るなら、誰を不幸にしてもいい。






どんなに酷い男だと負われても、琥珀の傍に居たいんだ。








アハハ・・・・こんなの狂ってるだろ?






それでも、琥珀を好きな気持ちは止められないんだ。














耳に着く繁華街のざわめき。




琥珀と他愛もない会話をしていた俺が、ふっと反対車線側の歩道に見つけた人影。







「・・・上境・・・紘・・・。」




ポツリと口から洩れた名前。





チッ!あの女、こんな所で何をやってるんだ。










「どうかしたの?」





俺の声が聞こえなかったらしい琥珀は、立ち止まって俺を見上げた。







「ううん、何も言ってないよ。」




首を左右に振ると、琥珀の視界から上境紘を隠す様に手を引いて歩き出す。






今は琥珀の視界に彼女は入れたくない。







彼女を見れば、必然的にあの場面が蘇るだろう。





琥珀の小さな胸を、もう痛めたくない。






今は琥珀に、リク兄を思い出してほしくないんだ。









上境紘がどうかこちらに気づきませんように、祈るような思いでひたすら足を動かした。






彼女が気付いて琥珀に接触なんてしてきても困る。







嫌な予感がするんだ。






琥珀と上境紘を合わせるなと、俺の第六感が囁く。









折角手に入れたこの幸せを逃したくないから。








俺のエゴだけど、琥珀をもうリク兄に返す事なんて出来ないんだよ。







下唇をギュッと噛み締める。







少し足早になった俺に、琥珀は戸惑いつつも、ちゃんとついてきてくれる。






「ごめんね、少しだけ急いで。」




理由は言えないけど・・・・。






「うん、分かったよ。」




可愛く微笑んで頷く琥珀に、罪悪感が湧いてくる。







それでも俺は足を止めない。








琥珀を手放したくはないから・・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る