第99話

「やっぱり、ナナは優しいね。」



なんて上目遣いに言うから、俺の理性が崩壊しそうになる。






琥珀だけは大切にしたい。







今まで遊んでた女の子達みたいに身体だけを求めたい訳じゃない。






琥珀の全てを手に入れたいけど、それは無理じいとかしたい訳じゃない。







だからどうか、これ以上俺を煽るのはやめて欲しい。






小さく溜息を吐いて、気持ちを静める。








「ん?どうかしたの?」




無邪気過ぎる琥珀に、俺は振り回されっぱなしだ。



今ここで小首を傾げるとか反則だし。





「なんでもないよ。ほら、行こう。」



平静を装うって琥珀の手を引く俺の心臓は、未だかつてないぐらいドキドキと脈を打っていた。






2人を包む風が、やっぱり今までとどこか違っていて。






それだけでも、俺は十分に幸せだった。









琥珀が居れば、もう何も要らない。







あの日から、欲しかったのは君の笑顔だけだから。









小学校の小さいガキの戯言だったかもしれない。





それでも、あの日俺を立ち上がらせてくれたのは、紛れもなく琥珀で。






小さい体で、大きな高学年のいじめっ子から俺を救ってくれたヒーローに違いないんだ。







あの日から、琥珀を守れる男になりたいと頑張って来た。






それなのに、再会はあんな惨いモノだった。







俺の尊敬するリク兄の横で、幸せそうに笑う琥珀を見た時、ホント頭が真っ白になったよ。




神様の酷い悪戯を心底憎んだ。







相手がリク兄だから、琥珀を横から掻っ攫うことなんて出来なくて。






ただ、指をくわえて見ていた。








琥珀の笑顔が見たくて、リク兄との幸せを願った。




それでも、収まらない独占欲を何度も、違う形で吐き出した。






琥珀以外にはきっと酷い男だと知れ渡ってる。






それでも、自分の暴走が琥珀に向かうのを防ぎたかったんだ。







苦しくて苦しくて、何度も諦めようとした。






それでも、目を瞑ると琥珀の笑顔が浮かんできて。





等々、他の女の子には反応さえしなくなった俺。

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