第98話

「どこか寄りたい所ある?」



と聞けば、





「ううん・・・ないよ。」




と言われた。







「じゃ、ホテルでゆっくりしようか?ルームサービスでケーキなんかも取れるしね。」



俺は腕時計に一度視線を落としてからそう言った。






「・・・・うん。」




少し遠慮がちに頷いた琥珀は、どこか緊張している様に見えた。








「ね、琥珀。手を繋いでもいいかな?」



どうしてか分からないけど、無性に琥珀と手が繋ぎたくなった。






肩から離した手を差し出せば、ぬいぐるみの入った大きな袋を片手に持ち替えた琥珀。






「うん、繋ごう。」


そして、ゆっくりと差し出した俺の手を掴んでくれた。






繋がれた手の温もりを感じた時、涙が出そうになった。






俺は長い長い片思いをして来た。






琥珀と手をこうやって繋げる日が来るなんて思ってもみなかった。







そりゃ、琥珀と手を繋いだのは初めてじゃない。





リク兄の彼女としての琥珀とは何度も繋いだ。





抱きしめた事だってある。








でも、それは今とは立場が違ったから。








琥珀が俺の思いを受け止めてくれた今、完璧な両思いとまではいかなくても、琥珀が俺のモノになってくれた事は大きく全てを変える。









彼女としての琥珀。






もう友達なんかじゃないんだと、実感する。









リク兄には悪いけど、もう返す事なんて出来ない。









俺は命を駆けて琥珀だけを愛し抜く。






リク兄みたいに悲しませたりなんか、絶対にしない。









決意を込めて繋いだ手に力を込める。






隣を歩く琥珀が、照れ臭そうに頬を赤らめてるから。






俺まで伝染しそうになる。








「それ、持つよ。」




琥珀が反対側の手で持ってた袋を掴む。





「いいよ。」



と遠慮がちに言った琥珀に、




「彼氏にそれぐらいさせてね。」



と優しくウインクして袋を受け取った。






彼氏って響き、凄くいいじゃん。





ニヤけが止まらなくなる。

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