第93話

色々な選択が済んで、いざ撮影に入る。





『撮影は3回だよ!カメラに向かって飛び切りの笑顔をむけてね!』



なんて、甲高い声が機械から聞こえてくる。






笑顔でカメラに向かってピースする琥珀の肩を少し膝を曲げて抱き寄せる。





「えっ?」



と驚いた顔をした琥珀。





「ほら、前向いて。」



カウントダウンを始めた正面パネルを見ながらそう告げる。







琥珀は恥ずかしそうにはにかむと、俺の隣で可愛く微笑んだ。






頬をくっつけて一枚。





琥珀の頭に顎を乗せて一枚。







そして最後の一枚は・・・・。







カウントダウン中に、




「琥珀。」



と名前を呼んだ。





「・・ん?」



琥珀が俺を見た瞬間に、顔を斜めに傾けて触れるだけのキスを落とす。






その瞬間【パシャリ】と落ちたシャッター。








「・・・・や・・・ナナ・・・の馬鹿。」



茹蛸みたいに顔を赤らめて顔を慌てて逸らした琥珀。







可愛くて、手を伸ばしてギュッと抱きしめた。







愛おし過ぎる。







ホントに、どんな仕草も胸が跳ね上がるぐらい、俺にとっては魅力的なんだよ。









「可愛い。」



と抱きすくめれば、耳まで真っ赤になった琥珀。





「・・・ナナ・・・狡いよ。」





小さな声の抗議。





そんな可愛らしい抗議ならいくらでも受け付けるよ。






にやけ顔で口元が緩んでしまうのを、止める方法を俺は知らない。








琥珀と居ると、色んな俺が現れる。






嫉妬したり、にやけたり、はしゃいだり。






琥珀が相手だから、出せる表情。







今まで、リク兄と言う大きな存在の影に居た俺は、大きな劣等感を抱えていた。






もちろん、リク兄は好きだったし尊敬もしていたけど。





あの完璧さに、嫉妬していた。






今の二重人格をつくり上げたのも、自分でその劣等感を処理しきれなかったからだ。

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