第90話

「よし、頑張ってみるよ。」




俺はそう言うと機械にお金を入れる。





それを琥珀が目を輝かせて見てるのかわかる。





「ナナ頑張って。」


少しテンションの上がった琥珀を横目に、俺は狙いを定める。





ゲームセンターに女の子なんかと来た事なんてないから、こんなシチュエーションも悪くないと思う俺が居る。







でも、きっと相手が琥珀だからなんだよな?






こんなに幸せで良いんだろうか?







俺の背中にそっと手を触れてる琥珀。





無意識なんだろうけど、男心をくするぐるんだよなぁ。







三回の挑戦で、取り出し口に落ちたぬいぐるみ。






「きゃー、やったね!やったね、ナナ。」



琥珀は両手を叩きながら飛び跳ねる。






可愛すぎるだろ、その仕草。






ほら、周りの男達も色めきたってる。






かなり、ウザい。






ギロッと辺りの男を睨みあげてから、屈んで取り出し口に手を入れて景品を掴んだ。








「はい、どうぞ。」



琥珀にそれを手渡せば、





「ありがとう。嬉しい。」



受け取ると笑顔でそれを抱きしめた。






小さい琥珀には、大きなぬいぐるみ。






そのアンバランスさが堪らない。








「可愛い。ナナ、ホントにありがと。」



両手でぬいぐるみを抱きしめたまま俺を見上げるから、思わず腰を屈めて触れてるだけのキスをした。





どうしても触れたい衝動に駆られたんだ。






琥珀はたちまち顔を真っ赤にして俯いた。






周りの男達は、落胆した表情を見せる。





ざま~みろ、琥珀は俺のモノだ。





ガキみたいに、琥珀を俺のだとみせびらかしたくなる。






馬鹿みたいだと思うけど。





今での俺には考えられない事だけど。







自然と漏れ出る笑みを隠せない。






ぬいぐるみを抱きしめたままの琥珀を正面から抱きしめた。





小さくて、温かくて、可愛い。






どうしたの?と言いたげに俺を見上げる仕草に、心臓は鼓動を加速する。

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