第88話

あの日、夕飯を食べた帰り、少し寄り道をしていたら、上境紘には会わなかったかも知れないんだ。






今更、もしもを言った所で仕方がない事ぐらい分かってる。







それでも、少しぐらい夢を見たいと思うんだ。







瑠璃を抱き上げて、高い高いをした。





それと同時に見上げた空は吸い込まれるぐらい青に染まっていた。














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夜の繁華街。





琥珀と並んで歩いていた。






「ね、少し寄り道しよう?」



そう言って繋いだ手にギュッと力を込めた。






「・・・うん、そうだね。」




無邪気に微笑む琥珀を今すぐでも、抱きしめたい衝動に教われる。







うちの学祭を早引きして、やって来たのは有名ホテル。





チェックインだけして、夕飯を食べに出た。





そして、今はその帰り。







「プリクラでも撮りに行く?」




隣を歩く琥珀がそう言って俺を見上げた。





「うん、そうしよう。」




頷いた俺は、琥珀の手を引いてゲームセンターを目指す。






幸せな時間が俺を包む。







屋上で琥珀が俺に言ってくれた言葉は一緒忘れない。



『・・・これからも傍に居てください。』




真っ赤な顔で俺にそう言った。






もう死んでもいいってぐらい嬉しかった。





何度も欲した女がやっと自分のモノになったんだから。





嬉しくて嬉しくて、琥珀を抱きしめた。






絶対に離さないと心に決めた。








もちろん、琥珀の心の中にはリク兄が居る事は分かってた。






それでも、琥珀は俺を選んでくれたんだ。





前を向いて進む道を選んでくれたんだ。






決して手に入る事の無かった琥珀が、俺のモノになった瞬間、景色は色付いた。







リク兄が渡米した理由を知っていた癖に、それを琥珀に告げなかった俺はきっと狡い。






狡くなっても、琥珀を手放す事が出来なかったんだ。

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