第64話
翡翠の手によって、琥珀の手が父親の腕に添えられる。
「ま、がんばれ。」
そう言い残して、少しドアを広げて先にチャペルの中へと体を滑り込ませた。
琥珀は父親の腕を、その小さな手でギュッ掴むと、父親を見上げた。
「お父さん、今までお世話になりました。」
丁寧に頭を下げた。
「ば・・・ばか、今そんな事を言うんじゃない、泣いてしまうだろ。」
すでに涙をためてる父親は、翡翠と同じことを言った。
2人して、最初に『馬鹿』って言わないでよね?
「幸せになるんだよ。」
父の震える声。
「はい。」
琥珀は頷くと真っ直ぐ前を向いた。
「じゃ、行こうか?」
父親は自分の腕を掴む琥珀の手にそっともう片方の手を添えた。
「では、新婦入場でございます。」
そう言いながら、ドアの前に控えていた黒服の人が、観音開きにドアを開けて行く。
中から流れ出てくる音は、とてもきれいなパイプオルガンの音と讃美歌。
しーんと静まり返ったチャペルの中へと、一歩足を踏み入れた。
正面の大きな十字架の後ろの窓はとても綺麗なステンドグラス。
キラキラと光を反射しながら、琥珀の到着を今かと待ち望んでいるように見えた。
祭壇の前には真っ白なタキシードに身を包んだ愛おしい人の背中。
長くて短いバージンロードを一歩、また一歩と踏みしめる。
今あなたの元へ・・・・。
沢山、遠回りして・・・。
沢山、泣いた・・・・。
それでも、今ここに居る事が出来るのは、きっと運命。
だれも抗う事の無い運命が、2人をめぐり合わせた。
頭に思い浮かぶのは、懐かしい日々
青い狼と呼ばれていた頃のリクと出会い。
追いかけられて。
追いかけた。
やっと今、その手を繋ぐ事が出来る。
遠回りした分、深まった愛情はこの先も、消える事は無い。
リク・・・・幸せになろうね?
End.
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