第62話
「琥珀、準備は良いか?」
その声に、窓際の椅子に座って外を眺めていた琥珀が振り返った。
今日の日の為に、綺麗に化粧されたその顔は幼さを少し残しつつも、誰もが羨むほど綺麗だった。
「うん。ひー君。」
先ほど声を掛けたであろう人物の名を呼ぶと、愛らしく微笑んだ。
翡翠は微笑み返すと、白いウェディングドレスを身に纏った琥珀にゆっくりと歩み寄る。
「お!降って来たか?」
さっきまで琥珀が覗いていた窓から外を見る。
ちらほらと舞い降りてくる白い雪。
「うん。積もるかな?」
と聞いた琥珀に、
「この雪は積もらねぇよ。」
と微笑む。
「そっかぁ~残念。」
「何?お前、結婚式の日に雪合戦でもするつもりだった?」
「う~ん、ちょっとやりたかったかも?」
って悪戯っ子みたいに微笑めば、
「さすがに無理あるだろ?それ?」
と額を小突かれた。
「いった~い。」
と上目づかいに睨めば、
「よし、行くか?」
後ろに目繰り上げられてたベールをゆっくりと琥珀の顔の前に垂らした。
「お嬢様、お手を。」
長くて綺麗な手を差し出した。
「はい。」
琥珀は白い手袋をつけた手を翡翠の手に静かに重ねると立ち上がる。
「六織の嫁にやるには、勿体ないぐらいに綺麗になったな?」
「惜しくなった?」
って首を傾げたら、
「だな?逃げるか、このまま。」
ガハハ・・・と笑った。
「そんなの嫌だよ。」
と頬を膨らませた琥珀に、
「さすがに俺も、ここに来てる人間を全員を敵に回す気はねぇよ。」
と優しい視線を琥珀に向ける。
「ウフフ・・・確かにそうだね。」
小さい時から変わらない笑顔がそこにある。
沢山傷付いて、沢山泣いたから、今がある。
闇が全て払しょくされた訳じゃねぇけど、もう琥珀は大丈夫だな?
自分に手を引かれて歩く琥珀が愛おしい。
小さい頃、俺や珊瑚の後を追いかけて来てた小さな琥珀が今旅立つ。
珊瑚・・・・見えてるか?
琥珀はもう自分の居場所を見つけたんだ。
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