第61話

「ハハハ・・・そうだね。僕ってやっぱり凄いや。でも、本気で欲しい子が振り向いてくれないなら意味ないね?」




七瀬が琥珀をギュッと抱きしめた。





けれど、琥珀の両腕がその背中に回る事はない。







「これで最後、本当に最後。」




七瀬から絞り出される言葉に、胸が痛くなった。






「・・・・・。」





琥珀は七瀬の言葉を静かに待つ。








「好きだよ?琥珀。大好き・・・・愛してる。」




切ない七瀬の声に一滴の涙が流れ落ちた。







胸がどんなに苦しくても、琥珀が七瀬に手を伸ばす事はもう無い。









「幸せになるんだよ?僕の天使。君だけを愛してた・・・・ずっとずっと愛してた。」





七瀬は最後にそう言うと、琥珀を腕の中から解放した。





愛してるじゃなく、愛してたと言ったのは琥珀を困らせないため。







その瞳から一筋の涙が流れ落ちたのを、琥珀は見ない振りした。












「ほら・・・母さんの所に行きな?」





今にも泣き出しそうな七瀬の笑顔に、琥珀は涙をこらえて、





「うん。」




と返事を返して、七瀬に背中を向けると皐月の元へを掛けよった。











七瀬は皐月と視線を合わせる。






『ありがとう』





言葉には出来ないありがとうを口の動きで伝えた。







皐月は満足そうに笑うと、自分の元に駆け寄ってきた琥珀の肩を抱いてドレスルームへ戻って行った。













ドアが閉まる前に見えた小さな琥珀の背中に、涙が一筋に落ちた。









あの日見つけた小さな天使は、本当に俺の手の届かない場所へと行ってしまう。







次々と溢れそうになる涙を指で拭うと、七瀬は踵を返して式場の外に向かった。










あの日と同じ良く晴れた空を眺めながら、煙草に火をつけた。






立ち昇る白い煙が、どうか俺の心も空へと連れ去ってくれますように・・・・・。

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