第59話

琥珀は皐月と共に、ゆっくりと七瀬の元へと歩いて行く。





アドバイザーが琥珀のドレスの裾を軽く持ち上げて後ろをついてくる。








「まったく、あれは本当に天然のタラシだね?」




さりげなく視線の合う女の子に微笑む七瀬を見て、皐月が溜息を吐いた。






「ナナは皆に優しいんですよ。」




琥珀はニッコリ笑う。





「いや・・・あれは計算してるよ。」




眉を寄せる皐月は、やっぱり七瀬を良くわかっているらしい。









「こら!笑顔の安売りしてるんじゃないよ!」




皐月の声に、七瀬がゆっくりと振り返る。







そして、皐月の隣で微笑む琥珀に焦点を当てた。




はっ・・・と息を飲むのが周りからも見て取れた。







次の瞬間、今まで見せてなかった本当の笑顔で琥珀に微笑みかけた。




周りから悲鳴が沸く。






「琥珀、すっごく綺麗だよ?」




立ち上がると、そう言いながら琥珀の傍まで歩み寄る。







「ありがとう、ナナ。」




「嬉しいなぁ。リク兄より先に琥珀のウェディング姿見れるなんて。ホントすっごく綺麗。」




そう言って優しくその腕の中に琥珀を閉じ込めた。






「似合ってる?」




頬を赤らめてそう聞けば、





「うん、もちろん。リク兄から奪い去りたいぐらいにね?」




と耳元で囁かれる。








皐月は、嬉しそうに微笑む七瀬を見て、静かに頷く。










七瀬を連れてきたのは、これが本当の目的。









ずっとずっと、琥珀に叶わぬ片思いをしてきた七瀬に、皐月から最後のプレゼント。







皐月にとって、六織も七瀬も同じぐらいに可愛い息子で、大切な存在。







そんな2人の幸せを心から願ってはいるものの、六織が琥珀と幸せになれば、七瀬は少なからず傷付いてしまう。






けれども、それは変えがたい事実。









それなら、最後に琥珀のウェディングドレスを六織よりも早く見れると言う喜びを味あわせてやりたかったのだ。






そして、本当に手の届かなくなってしまう琥珀を諦める決心を付けさせたかった。






琥珀を諦めた振りをして、他の女の子と付き合ったり、忘れた素振りをしていたものの、七瀬の心の中の底辺に居るのは琥珀

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