第58話
「こ・・・琥珀ちゃん、これを。」
青ざめて少し虚ろな琥珀に、オロオロとした皐月がペットボトルの水を差し出した。
「あ・・・頂きます。」
それを受け取って弱弱しく微笑んだ。
蓋を開けてそれを一口ゴクリと飲めば、冷たい水が喉に行きわたる。
上がってきていたムカつきも、すこしだが和らいだ。
「ホントに、ごめんなさいね?私ったらホントに何をしてるのかしら!」
自分に苛立つ皐月を見て、
「皐月さんのせいじゃないですよ?」
と優しく微笑む。
「でも・・・。」
と、眉を下げた皐月に、
「悪阻が出ただけですよ。それと、少しだけ疲れただけです。」
と言い切った琥珀。
辛いのを我慢して儚げに微笑む姿がなんとも愛らしかった。
ホントにこの子はなんて可愛らしい子なんでしょう?
皐月はもちろん、その周りに居た全員がそう思った。
「ナナに見せに行くついでに、少し外の空気を吸いたいです。いいですか?」
皐月とアドバイザーの顔を伺い見る琥珀。
「えぇ、そうね?あの子も外で待ちくたびれてる事でしょうし。」
と口元を緩める皐月と、
「はい、結構ですよ?付き添いの方に見ていただきましょうね?」
と優しく微笑むアドバイザー。
何かあった時のためにと、ボディーガード兼付き添いとして起用されたのは、神埼組若頭神埼七瀬。
イヤイヤ・・・若頭直々にボディーガードって!って思いましたよ?
それでも、皐月の一存でそう決まったのである。
もちろん、人の良い七瀬は二つ返事でそれを了承して、付いてきたのだ。
ナナ・・・ご苦労様です。
ドレスルームを出ると、待合場所に七瀬の姿を見つけた。
スーツ姿で俯いて赤いソファーに腰を掛けている。
もちろん、周りの熱い視線を独り占めしてるのは言うまでもない。
ほら、そこの彼女なんか彼氏らしき人の隣で、目をハートにして七瀬に釘づけられてる。
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