第57話

鏡の前に立つ琥珀の後ろに居た着付け係の人が目を見開いた。




「まぁ、仕立てたようにピッタリですね?とてもお似合いです。」




そう言いながら、長いベールの付いた銀色の王冠を髪に取り付けてくれた。





本当にそのドレスは、丈と言い着心地と言い、今までで一番琥珀に似合っていた。







「はい・・・このドレス、凄く素敵です。」





自然に微笑みが出てしまう。








「これなら、お母様もお喜びになりますよ。」




着付け係の人は試着室ドアを開けると、琥珀のドレスの裾をそっと持ち上げた。







琥珀は、ドキドキしながらもゆっくりと一歩を試着室の外に出した。








その瞬間、その場に居た人間から歓喜の声が上がった。





「「「わぁ~!」」」




ドレス選びをしていた新婦さんも係の人も、手をやめて琥珀に魅入った。










ドレス棚から視線を這わせて来た皐月と視線が絡む。






その瞬間・・・・・。






「いや~ん!!琥珀ちゃん、可愛すぎるぅ!」




着物姿の姉御皐月がそれはハイテンションで、飛びついてきた。







「へっ?」



間抜けな声の次に、




「うげっ!」



と急に抱き疲れた衝撃で、変な声まで出た。





変声の二段活用?






いや・・・そんなこと言ってる場合じゃなくって、苦しいです。






「これよこれよ!琥珀ちゃんにピッタリ。」





姉御のハイテンションに、周りはドン引き・・・。







うん・・・ある意味コワイヨネ?











「さ・・・さつき・・・さん・・・うぅ・・・。」





締め付けられて酸欠状態になりつつある琥珀に気づいたのは、着付け係の人で、





「お・・・お母様!娘さんが死んでしまいますよ!」




と皐月を引きはがしてくれた。






「あ!あら・・・ごめんなさい、琥珀ちゃん。」




青ざめた琥珀の顔を心配そうに覗覗き見た皐月。








「・・・・・。」





大丈夫とは言えないんですって・・・。







「・・・うぅ・・。」




込み上げたムカつきに口元に手を当てた琥珀。






「こ!こちらにお座りください。」



甲高い声でアドバイザーの人が、慌てて椅子を持ってきてくれた。







ここは一先ず甘えさせてもらう。

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