第56話

うんと首を振らない琥珀に渋々手に持っていたドレスを、アドバイザーに渡す皐月。






「じゃ、こっちかしらね?」




鼻歌交じりで、今度はプリンセラインを漁りだした。







ここまで、5着以上は試着した琥珀は、もう選ぶ気力も無くなって来た。





悪阻のせいで、ここ数日眠れていないせいでもあった。





それでもやっぱり白いドレスは魅力的に見えて、皐月の横で色々と手に取ってみる。






一生に一度の事だし、その日は一番輝いていたいもんね?








これも可愛い!




これなんか素敵!





そう思いながら見るモノの、背の低い琥珀には少々長め過ぎるドレスが多い。







その中で、ふっと視線を止めた一着のドレス。





プリンセスラインのキュートなテイストの真っ白なドレス。





胸元はビスチェタイプになっていて、腰のあたりでふんわりとした総レースの重ね縫いになっていて、裾の辺りに半透明なレースで作られた可愛いバラが縫い付けられていた。






わ~素敵・・・・。






思わず手に取り、それを上下に眺めた。









「あら、それ可愛いわね。丈もそんなに引きずらないし・・・。うん、試着してみましょう?」




皐月に促されて、本日何度目かの試着室に入る。








広い試着室に着付け係の人と2人きりで着替えはじめる。






「ご気分はよろしいですか?」




40代前半の優しそうな人が労いの言葉をくれる。





妊婦だと、式場に来た時に皐月が説明してくれてあるので、式場の人達はそれ相応の対応をしてくれるのだ。







「はい、大丈夫です。」



と、少し疲れた顔で微笑む。







「疲れた時は遠慮なく申し出てくださいね。時間は沢山ありますので、ゆっくり行きましょうね?」




優しい言葉と、温かい微笑みに心が温かくなる。






「はい。」




そう言いながら、琥珀は着ているものを脱いでいく。







着付け係の人はドレスを手に取ると、下着姿になった琥珀に丁寧に着せてくれる。






背中のファスナーを上げてもらうと、Sサイズのそのドレスは、琥珀にピッタリだった。

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