第54話

「お父さん・・・いつまで座ってるの?」






涙を流しながら正座する元就に、琥珀が声を掛ける。






「・・・うぅ・・・グスッ・・・琥珀がぁ~。俺の可愛い娘がぁ~。」






今のタイミングで号泣ってなんですか?





元就の泣き崩れる姿を見て、さっきまで潤んでいた瞳が渇いたのは言うまでもない。










「ほらほら、元就さん。いつまでもそんな所に座ってないでくださいね。」




マリの優しい言葉に、小さく頷いた元就はさっきまで食事していた席に戻って行った。






でも・・・足が痺れていたらしく、椅子に座る手前で躓いて豪快にズッコケた。








「アハハ・・・親父に何やってんだよ?」



指さして大笑いする翡翠。




お願い・・・止めてあげてよ、そう思った琥珀。






「あらあら、小鹿みたいですね?」




マリさんまで、笑わないの。






六織に至っては、必死に笑いを堪えていた。








お父さん・・・・完全に威厳無くしました。








「お父さん、大丈夫?」




琥珀が心配そうに声を掛けると、





「やっぱ、父さんの味方は琥珀だけだね?」




と嬉しそうに笑った。






「俺は敵に回ったつもりはねぇけどな?」



と苦笑いを浮かべた翡翠。





「もちろん、俺も親父さんの敵じゃないですよ。」



とニヤリと笑う六織。





「ホントですよ。私だって敵じゃないですよ。」



マリさんがワインをグラスに注ぎながら笑う。









私はこんな家族が大好きだ。









でも、ここから旅立つ。






リクとこの子と3人で幸せな家庭を作りたい。







今みたいに笑いあえる家庭を作ってみせるよ。







だからね、お父さん、ひー君見守ってね






相良家での楽しい夜は更けて行った。

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