第47話

【トントントン】襖を叩く音と、


「お茶が入りました。」


とマリの声。






「どうぞ、入ってください。」




元就がそう答えれば、




「失礼します。」



とお盆を手にしたマリが襖を開けて床の間に入ってきた。








「最高級の玉露を入れましたよ。」



笑顔でそう言いながら、元就、六織、琥珀の順にお茶を配って行く。





そして、お茶と一緒に並べられた小皿には、さっき手渡した金ツバが2つずつきれいに並んでいた。







「では、私はこれで。」




そう言って下がろうとしたマリに、





「マリさんもここに座ってくれないか?」



と元就が自分の隣を指さした。







「えっ?居てもいいんですか?」



不安げな顔を見せたマリ。





「もちろんだよ、マリさんは私のお母さんでしょう?」



そう答えたのは琥珀。





「・・・琥珀ちゃん。ありがとう。」




マリは瞳を潤ませながら父親の隣に腰を降ろした。








「マリさん、私達に孫が出来るようだよ?」




元就はそれはそれは嬉しそうな表情でそう告げた。






「まぁ、本当なの?琥珀ちゃん。」




マリは目を見開いて、琥珀を見る。






「うん、今2か月なんだって。」



照れくさそうにそう言うと、





「おめでとう!」



マリは涙をポロポロと流しながらそう言った。





「マリさん・・・ありがとう。」




琥珀まで止まりかけた涙をポロポロと流す。







「嬉しい。琥珀ちゃんの子供をこの手に抱く事が出来るのね。」




いつの間にか琥珀の傍までやって来たマリに、ギュッと抱きしめられた。






「・・・うぅ・・マリさぁ~ん。」




琥珀もマリに抱きつくと、うれし涙を流した。






マリからの『おめでとう』の言葉が心の沁みた。







わ~んわ~んと抱き合って泣く2人を、元就と六織は苦笑いを浮かべたまま見つめていた。





床の間は今までに無い程、幸せな空気に包まれていった。

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