第45話

六織は静かに深呼吸すると言葉を繋ぎだす。






「回りくどい事は苦手です。だから単刀直入に言います。琥珀を俺にください。何があっても幸せにします。」





再び深く頭を下げる。








六織の真剣さに、胸が苦しくなった。






琥珀がオロオロとする中、次に口を開いたのは元就だった。








「言いたい事は分かった。頭を上げなさい。急にこんな話になった理由を教えてくれるね?」



緊張の入り混じった元就の笑顔。





「はい。」



顔を上げた六織はしっかりと元就の目を見た。








「琥珀に、子供が出来ました。俺は一生かけて琥珀を生まれてくる子供を守りたいです。順序が逆になった事は、大変申し訳ないと思っています。本当に申し訳ありませんでした。」





今度は畳に額を擦りつける程、頭を下げた。







はっと息を飲む元就に視線を向けると、複雑そうな表情を浮かべていた。







本来なら、ここで怒鳴り声が飛び出すんだろうか?




どんなに怒られても、2人で決めた事を覆す事は無い。







琥珀は深呼吸すると、真っ直ぐに元就に視線を向けた。




「ごめんなさい、お父さん。」




そう言って、六織と同じように頭を下げた。







子供が出来たのは、六織だけの責任じゃない。






そう言う行為をして、子供が出来たと言う事は2人の責任。







リクだけに、頭を下げ指す訳にはいかない。









「馬鹿野郎!お前は無暗に俯くな!悪阻が酷くなったらどうすんだ!」



頭を下げたままの六織が琥珀にそう告げる。






「大丈夫。リクだけが頭下げるなんておかしい。」




「いいから、顔上げろ!」



「上げる時はリクも一緒。」



「いいから、具合悪くなんだろ!」



「大丈夫だって言ってるでしょう!」




一歩も譲らない琥珀。





こうなった琥珀は何を言っても聞かないだろう・・・。





強情すぎる・・・・溜息が漏れる。











「プハハ!・・・こんなんじゃ先が思いやれれるな?」




大声で笑い出したのは2人を見ていた元就。




「2人とも、顔を上げなさい。」




そう言われて、六織と琥珀は顔を上げた。




そこにはさっきまでの張り詰めた表情ではなく、和らいだ顔の元就が居た。

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