第29話
常連の泰雅は、自分のブレンドを作って貰っているらしい。
「へぇ、泰雅もなんか通の人みたい。」
琥珀はクスクスと笑いながら、自分のモカブレンドに砂糖とミルクを入れる。
「俺はここの珈琲にはちょっと煩い。」
なんだか、偉そうに言われた。
「泰雅のクセに、ウザいね?」
クルクルとスプーンをカップの中で回しながらそう言った。
「俺のクセにってなんだよ!」
すぐに血が上るのは変わってないらしい。
「えっ?言葉通りだけど?」
琥珀は泰雅をからかうのがやっぱり好きらしい。
「お前って、久々に会っても可愛くねぇな?」
毒を吐く泰雅に、
「泰雅に可愛く思って貰えなくてもいいし。」
琥珀は涼しい顔をして珈琲を口にした。
「やっぱ、ムカつく女。」
「泰雅はムカつく男だけどね?」
「チッ・・・。」
「舌打ち禁止。」
「うぜぇ!」
「はいはい。」
「マジでうぜぇ!」
「もういいし。」
銀狼のたまり場に居た時の様な雰囲気になる。
言い合いをしながらも2人はどこか楽しそうで。
その様子を、カウンターからマスターが微笑ましそうに見ていた。
「いつもの泰雅に戻った。」
琥珀は安心したようにそう言った。
「いつもの俺?」
怪訝そうに眉を潜めると琥珀を見る。
「うん、さっきまでさ。緊張した顔してたし。泰雅にはシリアス系は似合わないよ。」
琥珀に言われて、気持ちが張り詰めてた事に気づく。
「そっか。まぁ、俺も悩みぐらいあるしな?」
ニヤリと笑えば、
「私でよかったら聞くし。」
と笑顔を返された。
「あぁ、仕方ねぇから話してやる。」
偉そうに言ったのは照れ隠し。
「じゃ、仕方ないから聞いてやる。」
琥珀も泰雅の真似をした。
「親父がよ、弁護士になれって。」
泰雅は静かに話し出す。
「おじさんが?」
「あぁ、法学部受けて、自分の所で働けだと。今までそんな素振りも、言ったこともなかったのに、今頃だぜ?みんなの進路が決まったこの時期に・・・・。」
泰雅は苦しそうに顔を歪めて俯いた。
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