第30話
確かに、この時期になんて、無茶な事かも知れない。
どこの大学の法学部にせよ、秋も終わりに近づいたこの時期からじゃ、正直厳しいものがある。
「やる気なら資料も予備校もすべて準備してくれるんだとよ?」
吐き捨てた泰雅の言葉に、
「おじさん、今だから言ったんじゃないかな?」
「今だから?」
「うん。もしかして、気付いてたのかも?周りの進路が決まって自分だけが決まってない泰雅がもがいてた事。」
「俺がもがいてた?」
「うん。泰雅さ、総司君達や他の3年生の進路決まって行って、焦って無かった?自分の目標が見つからなくて。」
琥珀の言った事は当たってた。
正直、周りは夢だの目標だの言うのに、俺のは何にもなかった。
自分はこのままでいいのか?ってずっと焦ってた気がする。
「だから、おじさん。泰雅に前を見る事から始めて欲しかったんじゃないかな?おじさん、法学部に行く事を強制したわけでもないでしょう?」
そう言われ、親父の言葉を思い出す。
『別に無理強いするつもりはねぇ。嫌なら別の道を歩いても構わねぇからな?』
親父はそう言った。
自分は俺と働きたいと言ったくせに、強要はしなかった。
きっとそれが親父の不器用な優しさ。
琥珀に言われて気づくなんてな?
「こうやって悩む事で、泰雅は前を向ける。だからおじさんはきっかけを作ってあげたかったんじゃないかな?法学部に進めって言う事でさ。」
優しく微笑んだ琥珀の瞳が、応接室で見た親父の瞳と重なって見えた。
「・・・フッ・・・面倒くせぇ親父。」
泰雅は鼻で笑った。
でも、その顔からは緊張が取れていて。
「泰雅は泰雅のままでいいんだよ。周りに合わせる事なんてないよ。焦ってる泰雅なんて泰雅じゃないし。マイペースな感じが泰雅じゃん。」
「ククク・・・お前の中の俺のイメージってなんだよ?」
琥珀の言葉に、泰雅は大きな声で笑い出した。
「だって、泰雅って一匹狼的な感じじゃん?銀狼なだけに?」
クスクス笑いながら、琥珀も泰雅を見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます