第21話
琥珀が頑張ろとしていた時、俺は岐路に立たされていた。
秋の文化祭を終えると、高3の俺の周りは受験一色に染まって行った。
なんの目標も夢も無かった俺だけが取り残された。
七瀬や琥珀の事を心配しながら、俺自身が一番迷走していたのかも知れない。
総司は親父さんの後を継ぐために、医科大学を目指し。
猛は自分の女の為に国立大学を目指し。
他の連中もそれなりに希望があって、そこを目指してた。
俺だけが、何の目的も目指すモノも無かった。
焦りと苛立ちだけが募っていった。
そんな時に、親父から事務所に呼び出された。
「ま、適当に座れ。」
スーツをばっちり着こなし、髪型を決めた男が応接室のソファーに座りながら泰雅を促した。
「ああ。」
泰雅は対面に腰を下ろすと、胸ポケットから煙草を取り出した。
そして、それに静かに火をつける。
泰雅を真っ直ぐに見据えるその男は、加藤泰喜(カトウタイキ)弁護士、泰雅の父親である。
「で・・・呼び出して何の用だ?」
ぶっきらぼうな泰雅の物言いに動じる事もなく泰喜はニヤリと笑う。
「相変わらず、愛想のねぇ息子だな?」
あんたの息子なんだから、仕方ねぇだろ?
と思いつつも泰喜に怪訝そうに視線を向ける。
「・・・うぜぇ。」
「あ~本当可愛くねぇ。うちも琥珀ちゃんみたいな可愛い娘が良かったなぁ。」
・・・・・マジウザい。
泰喜は柊馬の一件で琥珀に会った事がある。
その時に琥珀の可愛らしさにファンの1人になったのだ。
それ以来、琥珀に会いたいだの、琥珀が可愛いだの、煩い。
琥珀・・・・どうしてっかな?
不意に思い出す笑顔。
最近会ってねぇな?
「干渉に浸ってるとこ、悪いけど。俺は忙しいから話進めるぞ?」
自分から琥珀の事を振って来た癖に、淡々と話をはじめる泰喜。
こいつは昔から、こう言う所が適当なんだよな?
泰雅は大袈裟に溜息を漏らす。
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