第7話

「そうか・・・。前橋、俺の行きつけのショップに寄ってくれ。」




翡翠は運転手にそう告げる。





行きつけのショップとはなんぞや?





と思っていると、車は動き出した。






「少しだけ、寄り道する、通り道だからそんなに時間は取らねぇ。」




そう言い切った翡翠に、



「はい、わかりました。」



と答えるしかなかった。








10分ほど走って、翡翠行きつけの超高級ブランドの服屋の前で車が停まった。








「おい、降りるぞ!」




翡翠に引きずられるようにして、車を降りる棗。







「しゃ・・・社長?」



困惑を隠せない。





こんなショップに何の用があると言うのか?






嫌な予感がして仕方がない。








そんな棗をよそに、ショップに入った翡翠。







「相良様、いらっしゃいませ。」




店長らしき人が笑顔で出迎えた。






「おう、悪いが、こいつに似合うシンプルなドレスを選んでくれ。ランチに行くだけだから、そんなかしこまったモノじゃなくていい。」




棗の腕を掴んだまま、グイッと差し出した。






「はっ?」



眉を寄せる棗と、





「かしこまりました。」



と丁寧に頭を下げる店長。







か・・・かしこまらなくていい!!






「さ、行きましょうか?」





フィッティングルームへと引きずられていく棗。






この店長も、翡翠と同様に強引らしい。







じゃな?と口パクしながら、手を振る翡翠に怒りが芽生えた。






絶対に、琥珀に今までの悪行をチクってやると心に誓った棗だった。







「ちょ・・・ちょっと無理です。」



焦る棗は、フィッティングルームに押し込まれる。






イヤだぁ~!勘弁してよ、あのアホ社長何を考えてんのよ?




悪態をつきながらも、足込められてフィッティングルームの広さに驚く。






やっぱり有名処はこういう所にもお金をかけてるんだと思った。



3畳ぐらいの広さに、各方向から見れるように全面ガラス張りになっている。






自分が沢山いて落ち着かないんだけどね?

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