第16話

車がマンションに向けて走り出す。


今はとくに新城組は落ち着いていて、姐さんの送迎も比較的のんびりとした空気が流れていた。



多分、緊張してんの俺だけ。



思った通り、しばらくすると、仲よさそうに翔先輩と姐さんが会話をし出した。



若頭の前ではこんな砕けた喋り方をしない翔先輩を見ている限り、この人なりに気を使っていることもあるんだな、なんてことを考えていた。




「本当に東京は人だらけだね」



交差点に溢れかえる人を見て、感心したような声でそう言った姐さん。



「女子高生の制服とか可愛いのばっかだし、羨ましすぎる。

ねぇ、翔。色んな制服の子いるけど、この辺りってそんな学校いっぱいあるの?」



「どうっすかね、駅がちかいですからね」



「祐樹がよく、制服で歩いてたあたしが目に止まったのが最初だって話をしてくるんだけどね…」



意外すぎる若頭の話に、えっ?っと声が漏れそうになる。


翔先輩は小さく吹き出した。

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