第15話

視線をゆっくり下ろす。



あの鋭い目は、俺の全てを見透かしてしまう。



一緒の2人を見て無心でいられるほど、

俺は大人にはなれていなかった。



それだけはあの人に知られたくない。



最後の俺の意地かな。







姐さんが車にのりこむと、若頭が自ら後部座席の扉を閉めた。

そして窓をコンっと叩き、中の姐さんに蕩けるほど甘い笑みをこぼした。



そして、ゆっくり体を伸ばす



一瞬で纏う空気が変わった。

野生の野獣の近くにいるような緊張感に包まれる。



この人の前では、誰だって萎縮してしまう。

格の違いを思い知らされる。



なのに、憧れてしまう。



この人は




「頼んだぞ、マサ」




ーーー本当に大っきい。




「……っ」



はいっと返事を返そうとしたが、理由もなく言葉につまって、

無言で頷く事しか出来なかった。



そんな俺を、若頭は目を細めて見て頷いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る