第43話・何気ないお昼のひとコマ
会議が長引いているのかお昼になっても戻ってこない聖人様。
「はあっー…退屈ね…」
フランワさんが両手をあげて背中を伸ばして暇してるが、私はその間に本を読んで時間を潰してる。
「ねぇ、ロゼリアさん」
「はい…フランワさん」
名前を呼ばれたから本を閉じて横に置きフランワさんの方を見ると鋭い眼光で私を見る。
「ジュン…聖人様の家に休みの間ずっといた
「えっ…?」
こういう時なんて答えるのが正解なんだろうと考えるけど思い付かないからありのままを口に出す。
「はい、自分の家に帰ってましたし、友人にも会えてとても充実したお休みでしたよ」
嘘は言ってない。
友人のキロナにも会ったし、家にも帰ってお母様とお出かけもした。
「…フランワさんはどうでしたか?」
「私は、“お友達”と遊べて楽しかったわ。お世話係を辞めたいくらい楽しかったの」
よっぽど充実した休みを送ったのだろうと思いつつ笑ったけど強調する“お友達”が気になるけどもフランワさんの事だから聞いちゃいけないね。
「でも、ジュン…聖人様ったら私の所に一度も訪ねてくれなかったから寂しかったのよねー…」
ジュンさん、フランワさんの家に一度も訪れてない事に不謹慎ながら嬉しくなり、私との約束を守ってくれた事、そして本当に仕事に追われていたんだと感じていたらガチャッと扉が開き聖人様が入って来た。
「聖人様、会議の方お疲れ様でした」
「!!」
椅子から私もフランワさんも立ち上がって頭を下げて聖人様を出迎え大司教様が労い、聖人様が椅子に座ったので私はお茶を用意して、彼の前にすこしだけ温くなってしまったお茶を置く。
「お疲れ様でした、聖人様」
「ありがとうございます、ロゼリアさん」
熱くてすぐに飲めない温度よりすこしだけ温くなってしまった温度の方が飲みやすいだろうし疲れただろうからお茶を飲んで癒やされてほしいと願って注いだお茶。
「体の芯から安堵します」
「そう言っていただけて嬉しいです」
「聖人様、またお呼びしますのでこのまま待機でお願いします」
「分かりました」
大司教様達は頭を下げて部屋から出て行ってそう言えばフランワさんは何処に行ったんだろうと見回したら部屋に居なくてガチャッと扉が開き、大司教様が何か言い忘れた事があったのか?と思ったらワゴンに食事を運んで来たフランワさん。
「聖人様、お腹空いたでしょうからお食事ですわ」
「わざわざありがとうございます」
テーブルに聖人様とフランワさんの分の食事だけが置かれる。
「ごめんなさーい、ロゼリアさんのは持ってこれなかったんですぅ」
「大丈夫です。自分で持ってきますから」
持って来ないのは想定済みだから自分で持ってくればいい事。
「聖人様、フランワさん先に食べていて下さい」
「遠慮なくいただきまーす。聖人様も食べましょ」
「僕は、ロゼリアさんがご自分のを持ってくるまで待ってます」
そんな事を言われたらキューンってしちゃうけど疲れてる聖人様を待たせる理由にはいかないので笑って答える。
「聖人様、私の事は気にしなくて大丈夫ですから先に食べていて下さいね」
そう言って部屋から出て食事を取りに向かい廊下を歩いてると王宮に戻ってきたんだなって肌で感じてまた聖人様の傍で働ける事が嬉しく思うのに聖人様とフランワさんが廊下で話していた事を聞くの忘れていたーと蘇ってきてしまったままの頭で厨房に向かう。
「こんにちはー、ロゼリアです」
「ロゼリアちゃん、休み明けかい?」
「はい。これからまたよろしくお願いします」
厨房の方々と顔見知りになり特別に試食したり可愛がってもらってる。
「もう一人のお世話係の女が自分の分と聖人様の分しか持って行かなかったからロゼリアちゃんの分だよー!って声をかけたんだけど無視されちゃったんだよ」
「そっ、そうですか…」
見え見えのわざとらしいフランワさんに呆れて言葉も出ない。
「ロゼリアちゃんの分の昼食だよ」
「ありがとうございます!」
気を取り直して自分の昼食を持とうとしたら誰かに私の昼食を取られたから焦って見たら知ってる顔。
「ジュ、聖人様!!どうして?」
「久しぶりなので迷子になっているかと思いまして」
「聖人様!お久しぶりでございます」
「聖人様!試食ですけどもどうぞ召し上がって下さい」
聖人様が厨房に顔を出したから注目を集め、試食を促されて美味しそうに食べてる。
「美味しいです。夕食も楽しみにしてます」
聖人様はそう言って私の昼食を持って厨房を後にして部屋に向かう最中に聞きたい事を聞いた。
「聖人様。ここで廊下の件を言って下さい」
「僕は、フランワさんに“僕は愛してません。ただのお世話係としてか見てませんから”と言ったんですよ」
「えっ?じゃあ…フランワさんの“ありがとう!愛してるわ”と言ったのは?」
「薄っぺらい言葉を並べただけだと思いますよ」
「聞けて良かったです!ありがとうございます」
「さぁ、戻りますよ」
軽い足取りで部屋に向かった。
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