第40話・沈む夕焼け〜ジュン目線〜
初めて自分の足で婚約するロゼリアの家に行く事は俺にとっては初めての事でもちろん彼女の両親にも挨拶したのも初めてでガラにもなく緊張していたのはアイツは知らねーと思う。
婚約した日くらい一緒に居てやりたかったが仕事が溜まっていて帰らないと休み中ずっと机に貼り付く事になるのは避けたかったから帰ったが…。
「後、七日ですか」
大司教から手紙が来て執務室の机に置かれた書類を見て投げ捨ててやりたくなった。
「ジュンさま、少し休憩はいかがですか?」
「アイツは会いに来てくれると思うか?」
「…ロゼリアさまですね」
俺らしくない質問をカールトに投げかけてるのは分かってるけどそれでも聞きたかった。
「ロゼリアさまならジュンさまに会いにきっと来ると思います」
カールトの言葉を信じた
「ジュンさま、朝からずっと向かっていたらお疲れでしょうから休憩なされてはいかがですか?」
「…あぁ、自室にいるよ。何かあったら知らせてくれ」
昨日から机に向かって仕事してるが忙しくて終わらないけど俺がいる間に一通りは終わらせないとカールトに負担がかかる。
「…ふぅー…」
ベットに寝っ転がって目を瞑ってゆっくりしていた所に扉が開く音がしてうっすらと目を開けそのまま寝たフリをしてると俺の名前を呼びベットに近付くのを待つと俺の尻尾があたるけどベシっと尻尾を叩く様子はなく尻尾の好きなようにさせていて笑いを堪えてる時に軽くキスをされて満たされる。
「…まだ、眠ってる?」
求めていた声が聞こえてきて体が無意識にコイツを引っ張り俺の胸の中に入れる。
「宣言通り来たんだな」
「…来ましたよ!私の婚約者さんは来てくれてないですけどね!」
ロゼリアのそっぽを向いた顔が可愛くて手を絡めてきて自分の口に手をあてる。
「会えるなんて思ってもみなかったですよ。忙しかったから会えて嬉しいですよ」
「……っ」
この言葉は本心で、満たされていき必然的に俺のモノが反応するのは仕方ないから少しでも俺の相手をしてもらう為に犠牲になってもらおうと思った。
「……」
ロゼリアをたっぷりと補給してから執務室で午後も書類を仕上げる俺の傍にはロゼリアが椅子に座って真剣に本を読んでる姿を見れるのは俺の特権。
「んっー…」
ロゼリアが声を出して背伸びをする姿に釘付けになり脇腹をくすぐったい気持ちにウズウズと駆られるけど我慢する。
「お嬢様。お茶のお代わりはいかがですか?」
「いただくわ、ラッカ」
ラッカはロゼリア専属の侍女で彼女が輿入れする時にも淋しくならないように一緒に家に入ってもらおうと考えていて俺の家で公爵使用人としての教育を施してる最中。
「ジュン様。カールト様から伝言です」
「カールトから?」
「はい。ジュン様も休憩もして下さい…との事です」
カールトにもラッカにも言われて笑って椅子から立ち上がってロゼリアの隣に座る。
「ラッカ、俺にもお茶を」
「はい、ジュン様」
ラッカが俺にもお茶を淹れてくれて俺の前に置き俺はカップを持ち上げて飲む。
「何を読んでいたんだ?」
「マナーの本です…」
椅子の背もたれに腕を伸ばして置きロゼリアの肩に手を置く。
「もう一通り習ってんのにそんな必要ねーよ」
「それでも心配になるんですっ」
伯爵が公爵に身分があがるんだもんな…。
まぁ、ほとんどが格下だから気にする相手は王宮と同じ身分がくらいだと思うけどコイツは気にしそうだな。
「わっ!見て見て、ジュンさん!」
「なんだ、急に…」
ロゼリアが立ち上がって窓に張り付き沈んでいく夕焼けを見つけて呼び俺は立ち上がって彼女の所に行く。
「綺麗ですね、ジュンさん」
「そうだな。この窓でお前と夕焼けを見るなんて思いもよらなかった」
夕焼けがこんなに綺麗だなんて普段はスルーしていたのにロゼリアと一緒に見る風景は違って見える。
「ジュンさん、少しはリフレッシュ…」
ロゼリアが笑顔を向けて俺の方を見るから唇を塞ぐ。
「んっ…ジュ」
ロゼリアを抱きしめてキスを深くしていくと拙いながらも応えるから角度を変えて味わう。
「ジュン…さっ」
俺から離れようとするからもっとキツく抱きしめ唇から逃れられないようにする。
「んんっ…はあっ…」
「逃げないで応えろ。ロゼリア」
鼻息荒く、苦しそうなロゼリアの頭を支えて離すとハアハアと息があがっていて俺は満足した顔をしていたら腕をつねられた。
「痛いですよ?ロゼリアさん」
「苦しかったですけど?ジュンさん」
そう俺に文句を言いながらも背中に手を回して俺を抱きしめる。
「沈む夕焼け、綺麗ですね…」
「もうじき暗くなるな」
空が紅く広がっていてロゼリアと見るから…彼女と一緒にいるから心が満たされると感じる。
「また、一緒に見ましょうね」
「そうだな」
時間が早く終わるのが感じるのは俺には初めての事だよ。
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