第27話・名前はチィーナちゃん

「着きましたよ、ロゼリア」

「はいっ…ジュンさん…ここはっ?」


窓から見る風景と馬車から降りて見る風景は大きさが違くて周りを見ると何処かで見たことある風景。


「聖人様…ここって…」

「あぁ、来ましたよ。ロゼリアさんが来るのを待ち侘びていた女の子が」

「来た…?女の子?」

「おねーちゃん!」


聞き慣れた声が聞こえてきて声のする方を向いたら走ってくる獣耳の猫族の小さな女の子。


「あっー…!!久しぶりだねー!!」


私はしゃがんで両腕を広げるとその子は私の腕の中に飛び込んで抱きしめるとその子も私を抱きしめる。


「元気にしてたー??怪我してない?」

「うん。おねーちゃん」


幸せになって欲しいと祈ってきっと笑顔でいてくれると願っていたけど笑顔でいてくれて嬉しい。


「聖人様、連れて来てくださってありがとうございます」

「おにーちゃん」

「元気してましたか?」


ブカブカだった服がその子のサイズピッタリになっていてビックリした。


「聖人様、ロゼリア様。ようこそいらっしゃいました」

「先生、お邪魔してます」

「先生、こんにちは」


あの時、案内してくれた先生が顔を出して私にギュッと抱きついてるのを見て困った顔をしてる。


「ロゼリア様が来るのを今か今かと指折り数えて待っていたのですよ…。今日来る?とか明日来る?とかね…」


先生の言葉を聞いて胸がキュンとなったけど半分は苦しくなり、寂しくさせた分笑顔でいてもらいたいから背中を優しく叩いて聞いてみた。


「私とたくさん遊ぼっか。そう言えば私、貴女のお名前を聞いてなかったわ。お名前はなに?」

「お名前?チィーナ」

「チィーナちゃんね!聖人様、遊びに行ってきまーす」

「そう言うと思ってましたよ。いってらしゃい」


聖人様に許可をもらって立ち上がってチィーナちゃんと手を繋いで遊び場に向かった。


「聖人様、ロゼリア様にお手をかけさして申し訳ございません!すぐにでも…」

「先生、ロゼリアさんに任せても大丈夫ですか?」

「はい、ロゼリア様がご迷惑でなければですけど…」

「ロゼリアさんなら大丈夫です。チィーナちゃんにたくさん遊んでもらいましょう」


先生と聖人様がそんな会話をしてるとは思わずにチィーナちゃんに連れてかれて私は孤児がたくさんいる場所に座っていてどの子も笑顔で服が前見た時より彼女と同じでピッタリ…少しブカブカの服をゆったりと着ている。


「おねーちゃん、これ読んで」

「いいよ」


チィーナちゃんは本を持って来て私の膝上に座ると彼女の重みが来るけど軽い。


「たのしいとたのしい」

「ママがねいつも読んでくれたの」


無邪気に笑って伝えてくれる事に胸が苦しくなる。


「そうなの?おねーちゃんも一緒に聞きたかったなー」

「キャハハー…」


本を持ってチィーナちゃんを抱きしめて左右に揺れると笑ってくれる。


「おねーちゃん、まだいる?まだいる?」

「まだいるよ。まだ遊ぼうね」


私はチィーナちゃんが持ってきた本を彼女に読み聞かせて読み終わると今度はボールを持ってきてコロコロ転がす。


「おねーちゃん!」

「わっ!ふふっ、捕まえた」


チィーナちゃんがボールをしまって私に飛び込んでくるから抱きしめると彼女も私を抱きしめ左右に揺れる。


「チィーナちゃんがたくさんたくさん笑顔になりますように」

「おねーちゃん、好き」

「私も大好きだよ」


彼女に言葉を伝えてギュってするとチィーナちゃんは目を擦って眠たそうになっている。


「チィーはもうお昼寝の時間なんだよ」

「そうなんだね」


猫族の男の子が教えてくれてチィーナちゃんを寝る場所に連れて行こうとしたけど彼女は私を抱きしめて離れない。


「チィー!お姉ちゃんが困ってるだろ!」

「やだっ、やだっ。まだ一緒に…いるんだもん」


眠気と戦ってるチィーナちゃんを優しく抱きしめて背中を優しく叩いてゆっくりと眠れるように祈る。


「大丈夫よ。チィーナちゃんが眠るまで傍にいるわ。ゆっくりおやすみ」


ぐずらずにスヤスヤと眠りの中に誘われたチィーナちゃんの全体重がのしかかる。


「ロゼリアさん、僕が運びますよ」

「…聖人様。お願いします」


ぐっすりと眠ってるチィーナちゃんを聖人様が抱っこして別の先生に付き添われてベットに運ぶ。


「いつもはぐずるあの子がぐずらずに眠るなんてロゼリア様、ありがとうございます」

「私は何もしてないですよっ」

「ふふっ。また来てくださると嬉しがります」

「はいっ!また来ます!」


私に出来る事はちっぽけかもしれないけど未来を担う子供達が大きなお花をそれぞれ咲かせていってほしいと祈る。


「寝かして来ましたよ。ぐっすりでした」

「嬉しがってくれたみたいで良かったです」


聖人様が戻って来た。


「この間に失礼しますね、先生」

「また、会いに来ます。先生」

「はい、また来てくださるのお待ちしております」


馬車に乗り込み孤児院を後にする。


「チィーナちゃんが気になっていたから顔を見れて安心しました」

「また来ましょう」


聖人様に提案されて嬉しくなり笑顔で応える。


「はい!」






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