第21話・水晶に選ばれし者…ロゼリア

自分の部屋で寝ていたらジュンさんの大きい声がして慌てて見に行ったら裸同然のフランワさんとジュンさんが向き合っていて愕然としていたらジュンさんが近付いて来たけど手を振り払って自分の部屋に戻り扉に背を預けて座り込む。


「…っく、ひっく…」


胸をズキズキと引き裂かれていき涙が止まらないから今日はお休みしたいと思ったけど制服が視界に止まり逃げてちゃダメだと思って立ち上がり鏡台の前に行くけどこんなグチャグチャな顔を見せれない…と鏡の中の私は笑う。


「失恋って辛いね…」


ジュンさんの事はもう名前で呼ばないで聖人様と呼び、彼を見てもなにも考えないと制服を手に取り着替え聖人様の部屋の扉の前で深呼吸して震える手でノックしてドキドキしながら部屋に入る。


「…聖人様、おはようございます」

「あらっ。もう、着替え終わってますけど?」

「ロゼリアさん。遅かったですね」


聖人様の着替えはもうフランワさんが手伝ったらしく制服に身を包まれていて椅子に座っていた。


「フランワさんが手伝ってくれたから早かったですね」

「ありがとうございます」


聖人様がフランワさんに笑顔を向けるから胸が痛み考えないと決めたのに弱いな、私…と二人を遠くに見ていた。


「ロゼリアさん、行きますよ」

「は、はい」


朝食場所に向かって朝食を食べるけど食が進まない。


「聖人様、今日の予定はー」


あんな事あったのに、聖人様もフランワさんも通常通りだし…って考えないって決めたのにと考え事をして聖人様が呼んでいたのを気づかなかった。


「リア…ロゼリアさん!」

「は、はいっ!!」


名前を強く呼ばれて慌てて立ち上がった。


「お世話係のロゼリアさんが聞いてなくてどうするのですか?」

「聖人様、申し訳ございません!」


慌てて頭を下げて謝罪をするけど聖人様はため息をつかれる。


「はあっー…。今日の訪問に貴女は着いてこなくていいです」

「えっ?」

「今日は、1日書類整理をお願いします」


聖人様は私の目を逸らさずに強い口調で言い放って聞いてなかったのは私だからそのまま受け取った。


「分かりました」


フランワさんはクスッと小さく笑っていて恥ずかしさより情けなかった。

朝食を食べ終えて二人は馬車に乗り込もうとしていた。


「気をつけて行ってらしゃいませ」

「行ってきまーす。ロゼリアさん!書類整理、頑張って下さいねぇ」


聖人様とフランワさんに挨拶をするけどフランワさんは答えてくれたけど聖人様は、無言で馬車に乗り込み背中を見つめると黄色の黒い縞模様の尻尾がユラユラ揺れて馬車の扉が閉まるまで頭を下げ出発して行ったから頭を上げて書類整理をする為に書類部屋に向かった。


「はあっー…」


聖人様に本格的に嫌われて事後・・なんて見られたくないよね…と考えていた。


「!!…考えないって決めたでしょ!」


そう思ってもグルグル回って考えてしまうけど、嫌われたとしてもそれ以上嫌われないように書類整理は完璧にしようと没頭していた。


「ふぅー…」


背伸びして両肩を回していたら扉が開いた。


「ロゼリア嬢」

「大司教様、どうしたのですか?」


大司教様が書類部屋に顔を出して私は手に持っていた書類をテーブルに置く。


「少し、休憩しませんか?」

「はい、私で良ければ」


大司教様と対面に椅子に座りお茶を出され飲む。


「甘くて美味しいです」

「お世話係のお仕事は慣れましたかな?」

「まだまだですけど少しは慣れました」


今日は聖人様に嫌われていて朝も怒られてしまったけど少しは慣れたと思ってる。


「ロゼリア嬢が日々頑張ってるのは見てますよ」

「ありがとうございます、大司教様」


大司教様に褒められると少しくすぐったいけど嬉しくなる。


「貴女は純粋で素直で聖人様はどう接していいのか迷っていられるんだと思いますよ」

「…?」


大司教様の言ってる事が半分も分からなかったけどこの際だからと思い切って聞いてみた。


「大司教様…このお世話係を降りたいって言っても降りれないですよね?」

「そうですね。水晶様に選ばれし者で、聖人様を身も心も純粋に素直に支えられる者なんですよ」


水晶様に選ばれし者で純粋に素直に聖人様を身も心も支えられる…私は純粋でも素直でも無いけどお世話係に任命された時に聖人様を癒やすと誓った事を思い出す。


「…もう少し聖人様のお傍で頑張ってみようと思います」

「きっと喜ばれますよ。一番喜ぶのは聖人様だと思いますからね」


大司教様と笑い合ってお互いにお茶を飲み干す。


「仕事に戻ります。怒られてしまったけどこう見えて書類整理は好きなんですよ」

「そうですか。ロゼリア嬢、また休憩に誘いますよ」

「はい、お待ちしておりますね」


大司教様は、立ち上がって書類部屋から出て行き私も立ち上がってテーブルに置いた書類を手に持ち整理していくき大司教様に言われた事に段々と心がウキウキしていきルンルンで書類整理が捗る。


「聖人様に喜んでもらえるといいな〜。朝は怒られちゃったけど挽回するぞぉー!!」


片手を上げて自分に勝つを入れる。

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