第18話・フランワと初めての二人っきり

朝食を食べ終えて予定は本日は何処にも出かけないで一日会議に縛られる聖人様。

その間は別室にて待機する私とフランワさん。


「ロゼリア嬢と、フランワ嬢は別室待機になります」

「はい」


ここに来てフランワさんと二人きりって初めてな気がすると思いつつ別室に案内され、それぞれ椅子に座る。


「ジュン、会議面倒くさそうだったわね」


フランワさんは、自分の爪を見つめながらそう言ったけど聖人様…無表情だった気がするけどあの表情で分かるフランワさん凄いなと感心するのと同時に呼び捨てに出来る仲なんだと胸がチクッと痛む。


「あっ!ジュンじゃなかったわね。聖人様ね」

「…大丈夫です」


少女のように頬を赤らめて照れ笑いするフランワさん。


「ロゼリアさんはジュンの事を…聖人様の事をどう想ってるの?」

「えっ?聖人様の事ですか」


どう想ってるって…好きだから告白したと思ったけどジュンさんからの返事は無くて…それは私が見たかった夢だったみたいだけども…でも朝起きたらジュンさんは隣にいた。


「ジュン…カッコいいもんね。虎族・・

聖人・・で、ステータスは完璧」

「フランワさんは…ステータスで男性を選ぶのですか?」


制服を握りしめて聞いてみるとフランワさんは足を組み真っ直ぐに私を見る。


「えぇ、ステータスは大事よ?…のジュンは侯爵で家業を継ぎ虎族だったけど今のジュンは 聖人・・って肩書きが入ったのよ!」


それを聞いて改めて私は、ジュンさんが聖人様だから虎族だから好きになったわけじゃない事に気が付けた。


「フランワさんがジュ、ジュンさんをどう想ってるか分かっても…わ、私も諦めるつもりはありませんから」


顔が熱くなるのが分かりながらも自分の気持ちを伝えるとフランワさんは笑う。


「どっちがジュンに選ばれるなんて分かりきってるのに。だからお子ちゃまなのよ?」


7歳年下ならジュンさんから見てもフランワさんから見てもお子ちゃまかもしれないけど、お子ちゃまなりにアピールは出来ると思うし、色気は出せないけど癒せる事は出来る。


「お子ちゃまでも構いません。ジュンさんを癒やしたくってお世話係を任命された時に誓ったんですから!」


孤児を軽蔑した目で見るし、誤解させるような行動をしたりしてフランワさんの行動は読めないけど負けたくない思いを込めてそう言ったらガチャッと扉が開き聖人様が入って来た。


「聖人様!会議は終わったのですか?」

「午前中の会議は終わりです」


フランワさんが聖人様に近付き状況を聞き答えながら椅子に座る聖人様。


「聖人様、お茶です」

「ロゼリアさん、ありがとうございます」


聖人様にお茶を差し出して飲み干す彼はフランワさんの名前を呼ぶ。


「フランワさん」

「はい、聖人様。何用でしょうか?」


フランワさんの名前を呼んで何の用事を話すのかと思っていたら率先して行かなそうな事を伝える聖人様。


「昼食をここで食べるので三人分の昼食を持って来て下さい」

「えっー!私がですかー?」


フランワさんは面倒くさそうに答え私チラ見するから名乗り出た。


「聖人様!私が三人分の昼食を持ってきます」

「ロゼリアさんは、ここにいてください。フランワさん」


名乗り出たのに聖人様に却下されて聖人様はフランワさんの名前を強く言う。


「もぉ!分かりました!持って来ます!」


怒りながら部屋を出て行きジュンさんと二人きりになる事にドキドキする。


「ジュンさん、フランワさんに頼まなくても私が持ってきましたのに…」

「ロゼリア、疲れたから…」

「?」


聖人様は首元を緩めて私に向かって両手を広げる。


「俺を癒やしてくれるんだろ?」

「……っ」


私の最後の言葉を聞いていたのっ!?と戸惑いながらもジュンさんにゆっくりと近付く。


「あの言葉は嘘だったのか?」

「嘘じゃないけど…急にされると恥ずかしいです」


ジュンさんの傍は、まだ慣れなくて緊張してドキドキ高鳴る。

顔が熱くなるし、手汗もかくし…。


「初々しくて良いな。ロゼリア」

「……っ」


ジュンさんは触れずに言葉だけで私を翻弄するから何となく悔しくなり思い切って両手を伸ばして抱きしめる。


「これで癒やされますかっ…?」

「抱きしめるだけじゃ癒やされねぇよ」


そう言いつつもジュンさんは頭を私の胸に預けて腰に手を回して抱きしめてくれる。


「ジュンさん、午前中の会議お疲れ様でした。午後もジュンさんが頑張れますように」


ジュンさんが傍にいてくれるから頑張ろうって思えるんですよ…。


「俺をもっと癒やせよ、ロゼリア」

「ジュンさんの疲れがなくなりますよーに」


ギュッと抱きしめて彼を最大限に癒やして、もう一回彼に告白する…!と決めた。


「ジュンさん、癒やされてますか?」

「まだ、足りねぇ」


彼を誰にも取られたくないし、フランワさんには絶対に負けたくないし、7歳年下でお子ちゃまでも、こうやってジュンさんを癒せれるのは私の特権で、抱きしめられて抱きしめてが出来るのは彼だけ。


「ジュンさん、午後も頑張って下さいね」


心から応援しますからね!


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