第12話・孤児院兼病院訪問

昨日は、聖人様が私の部屋に夕食を持って来てくれて彼の優しさに触れた気がしたのに…。


「聖人様、ここが孤児院兼病院ですわ」


フランワさんが聖人様に紹介する姿を見て胸が痛む。

だって朝、聖人様を起こしに行ったらベットに下着姿のフランワさんが座っていて聖人様はベッドの中にいたけど腕は素肌が見えて…。


〔おはよう〜ロゼリアさん〕

〔おはよう…ございます…。フランワさん…〕


ひと目で二人は抱き合ったと思ってそれ以上は居たくなかったから慌てて部屋を出たからその先はどうなったか分からない。


「ロゼリアさん?どうかしましたか?」


今は、訪問に来ていたんだと思い出して聖人様の手が伸びてきたから触られたくなくて咄嗟に避ける。


「ロゼリアさん…?」

「……っ。聖人様、私は別の場所を見てきます」


聖人様とフランワさんとは別の場所を見に行き二人と離れ孤児院を見てまわって歩いていると制服を引っ張られた。


「おねーちゃん、だぁれぇ?」

「…こんにちは。私は、ロゼリアって言うの」


視線を下にずらしたら小さい獣耳の猫族の女の子がいてしゃがみその子の目線に合わせて喋る。


「ロゼリア…?」

「うん。エライね!言えたね」


服が少しだけブカブカしていて笑顔で応えたらその子は、私を抱きしめるから抱きしめ返すとホワッと温かくなって不安に満ちていた女の子の顔が安心しきった顔に変わった。


「おねーちゃん、温かいね。ママみたい」


この女の子だけじゃない。

他の子だってきっと愛情に飢えてるから私が

ここは安心だよって癒やしたい。


「ここは、孤児院エリアですか?」

「はい。皆様の税金で回してる認定孤児院です」


後ろから声が聞こえてきて聖人様達が来たんだと思ったら、女の子は彼に今度は近付く。


「おにーちゃん、だぁれぇ?」

「こんにちは。ジュンって言うだよ」


聖人様はしゃがむとその女の子は、私から離れて聖人様を抱きしめる。


「ジュン?温かいね、パパみたい」

「……っ」


案内しているであろう女性の先生らしき人が涙を浮かべていた。


「ずっと喋らなかったこの子が喋るなんて…」


えっ?…喋らなかったって…私と会った時はもう喋っていたけど…?と不思議に思った。


「…目の前で両親を事故で亡くしてるのです。そのショックで声が出なかったのに…」


悲痛な想いで暮らしてきたならこれから先は笑顔一杯の人生を歩んで欲しいと願いを込める。


「せんせぇい。なんで、ないてぇるの?」

「嬉しいからよ。良かったね、声が出せて…」


先生がその子を抱きしめる。


「聖人様、ありがとうございます!やっぱりこの国の住民を護ってくださるお方ですね」


立ち上がって聖人様の後ろに回るとフランワさんが小声で伝えてくる。


〈よく孤児なんて触れるわね、尊敬しちゃう〉


聖人様のお世話係を務めてるのにそんな事が言えるなんて信じられない!と怒りが爆発しそうになった。


「先生、この先は自分達で回ります」

「ゆっくり見て行って下さい」


先生はその子と手を繋いでお辞儀をして持ち場に戻った。


「フランワさん、発言に気をつけて下さい」

「申し訳ありませんでしたわ!」


フランワさんは不満そうに謝ったけど聖人様は、獣耳だから小声が聞こえるんだわ!悪く言うと地獄耳ね!


「聖人様、こんにちはー」

「こんにちはー」


歩いていくと子供たちが笑顔で挨拶していき聖人様は笑顔で応える。


〈俺の力以外がもうすでに充満してる…〉


この子達がこの先笑顔一杯の人生を送れますようにと祈って足を進める。


「聖人様、孤児院はここまでですわ。今度は病院を訪問ですわ」

「ロゼリアさん向かいますよ」

「はい、聖人様」


聖人様に呼ばれて孤児院を後にするけど、私の中に心残りが残る。

あの時に会った女の子にまた会えたなら会いたいと思い今度会う時は笑顔一杯の女の子でいてほしい。


〈この力は…ロゼリアの術…?〉


聖人様がそんな事を考えていたなんて思いもよらない私はただただ幸せを祈っていた。


「聖人様がお見えです」


病院でも熱烈な歓迎を受ける。


「聖人様ー!」

「聖人様、ようこそ!」


ここの病院の院長が出て来て聖人様と挨拶と握手をする。


「聖人様、ようこそ。お待ちしておりました」

「皆さんの顔を見に来ました」


院長に案内されて手術室、診察室、検査室が完備されていて待合室もとても綺麗だった。


「重症患者さんは滅多に運ばれてこないですね」

「良いことですね」

「はい。聖人様がこうやって訪問してくれる事も患者にとっては癒やしになります」


聖人様の術には癒やしの術もあって彼が訪問する事で癒やしが発動もされている事に気付いて聖人様って凄いと改めて思った。


「聖人様!握手して下さい」

「良いですよ。早く治るように反対の手にしましょうか」

「えっ?」


握手を求めた患者さんは驚いて聖人様は握手をすると手を痛めていた患者さんはグルグル肩を回して驚いていた。


「聖人様!ありがとうございます!」

「あまり無理をせずに」


患者さんに優しく声をかけて笑った。

病院訪問も、無事に終えた。

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