第8話・聖人様の初めての治癒術

街外れに向かっていくと人がまばらになり聖人様は、交互に手を変えて振っていたがさらに人が少なくなり聖人様は手を振るをやめた。


「聖人様、最後の領地が休憩場所になります」

「それで一周って所ですか?」

「そうですわ!早く紹介したいですわ!」


最後の領地に入ると聖人様が来るのを待っていたかのように沿道で手を振っていたから聖人様もそれに応えるように手を振る。


「聖人様じゃ。生きているうちに見られるなんてありがたい」

「おかーさん。隣のおねーちゃん達は聖女様?」

「違うわ。黒いヴェールを被ってるでしょ?聖人様のお世話係様よ」


お母さんが小さい女の子に説明していた。

馬車は騎士の誘導で停車場所に止まり、馬車から降りてきた聖人様と私達二人を見た住民達が集まってきた。


「聖人様!握手してくださーぃ」

「聖人様!こっち向いてー」


聖人様は、あれから笑顔が貼り付いてるみたいにずっと笑って手を振っていて疲れてると思ったから椅子がいるか聞いた。


「聖人様、椅子にお座りになりますか?」

「えぇ、座らせていただきます」


椅子を住民から借りて用意すると小声にて耳元で嫌味らしき事を言う聖人様。


〈もっと早く用意してくれると助かるんですけどね〉


そんな嫌味らしき事を言う元気があるなら椅子いりませんよね?と思うけど私は聖人様のお世話係とお腹に落として爽やかに座る聖人様にフランワさんは頭を下げてる男性を紹介する。


「聖人様、ここの領地の領主様ですわ」

「初めまして、聖人様。お目にかかれて光栄でございます」

「初めまして。休憩場所にて使わせていただきありがとうございます」

「勿体ないお言葉。ウチの領地で良ければどうぞごゆっくりして下さい」


立ち上がって領主様と聖人様が握手していた時に騒がしくなった。


「聖人様がお越しに来てるんだぞ!どうしたんだ?」


大勢の人の隙間から獣耳の男性に抱えられてきた男性が聖人様の前に来たけどその姿にビックリした。


「聖人…様!助けて…下さい…」

「!!」

「コイツ、はしごから足を踏み外して真っ逆さまに落ちてよ…」

「痛てぇーよ…」


足が変な方向に曲がっていて聖人様は慌ててその男性の近くに寄る。


「痛かったですね。今、治しますよ」


そう言って聖人様は両手を患部に手をかざす。


「痛かったらすぐに言ってください」

「は…い。聖人様っ…痛いより温かいです…」


変な方向に曲がっていた足は元通りになっていく。


「おっ?痛くない…?足が元通りになった!」


男性は変な方向に曲がっていた足が元に戻った足をすぐさまに動かし始めて感動していた。


「聖人様!ありがとうございます!」

「良かったなー!!聖人様、ありがとうございます!!」

「…お役に立てて良かったです」

「奇跡を見たぞー!」

「凄いです!聖人様バンザーイ!」


初めて見る治癒術を見て住民達も感動して私も感動して聖人様を見たら顔が真っ青になっていて今にも倒れそうになっていたからそっと周りに気付かれないように背中を支える。


「聖人様、お疲れ様です。そろそろ出発しましょう」


私の言葉に反応はしなかったけど抵抗もせずに立ち上がって馬車に向かって行く。


「あれが治癒の術なのね!」

「さすが聖人様だ!!」


街の人達も初めて見る治癒の術を見て興奮して何度も口にしていた。


「バンザーイ!聖人様!」

「この救ってくれたお命を聖人様に捧げます」


聖人様は、辛そうなのに声をかけてくる住民達に手を振り聖人様が馬車に乗り込み先にフランワさんも乗り込み、私は領主様に挨拶する。


「ありがとうございました」

「聖人様の尊い術を見れて感動です!」


領主様に一礼をして馬車に乗り込む。


「出発します」


馬車が動いてゆっくりだった速度が早くなる。


「…どうして分かったんですか?」

「何がですか?」


聖人様の真っ青な顔が徐々に肌色に戻って来て安堵したら聞かれ、きっと知られたくないはずだからとぼけるつもり。


「とぼけるつもりですか…」

「私が疲れたから馬車に帰りましょって言っただけですよ」

「聖人様にまだ、紹介したい人がいたのに〜」


フランワさんは気付いてないようで残念がっていたけど聖人様にとって初めての術使いして慣れない事をしたから体力が消耗してあんな真っ青な顔になったんだと思った。


「お披露目パレードお疲れ様でした。帰りはこのスピードで帰ります」

「大丈夫ですよ。まだ手を振る余力は残ってますから」


聖人様は、そう言って外に向かって手を振る。

疲れてるはずなのに疲れを見せない姿は凄いなって思うけど心配。


「聖人様、お披露目パレードお疲れ様でした」


王宮に着いて出迎えたのは大司教様と関係者で、聖人様に向かって頭を下げる。


「聖人様、初めての治癒術を無事に発動出来て安堵しました」


大司教様の言葉に耳を疑った。

だってその場に大司教様居なかったよね?どこで見ていたの?と不思議に思っていたら黙っていた聖人様が口を開く。


「水晶で盗み見ですか?」


水晶で盜み見ってどういう事なんですかっ?!

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