第7話・お披露目パレード

「新しいお方がとうとう見られるのね!」

「楽しみだな!誰がなってもこの国を護ってくださる方だ!」


王宮の窓から見たら街の人達が王宮の門に集まって今か今かと待ってる。


「聖人様。そろそろお時間でございます」


朝食を食べ終えた聖人様を含めた私達は時間まで客間で待っていて彼は無言で立ち上がって大司教様が扉を開け、私はお世話係なので部屋で待機するって思って見送るつもりでいたけどフランワさんは聖人様の後を付いて歩いてる。


「ロゼリアさんは何をしてるのですか?」

「えっ?」


名前を呼ばれて見ると呆れた顔をしてる聖人様。


「ロゼリアさんも行くんですよ?」

「えっ?私はお世話係なので待ってますよ?」


聖人様は、私を連れて行くつもり満々でいたらしいけどやんわり断ったら聖人様は、私に近付いて私の手首を掴む。


「僕のお世話係なんですから僕の傍にいないとダメですよ」

「聖人様っ、私…人前に出るのは…き、緊張してですね…」


聖人様に無理矢理引っ張られながら歩き説明する。


「それで?」

「それでって…!」


王宮の門に無情にも着いてしまって聖人様は私の手首を離して私を見る。


「お前は俺の世話係に選ばれたんだ」


聖人様は、優しいのか優しくないのかまだ全然分からないけど、一つ言える事は私は聖人様のお世話係に選ばれた。


「聖人様のお傍にいます」


フッて笑って私から視線を逸らし聖人様の後ろに私、フランワさんが並ぶと同時に彼女に一部始終見られた事に恥かしくなった。


「……」


門を開けると窓から見た音と今、足で立ってる場所で見る音は大きさが違って肌でその大きさを感じる。


「聖人様だね!ありがたや〜」

「今度は聖人様だよ!」


人々が口々に聖人様を見て手を振り、声をかけると聖人様も笑って手を振りながらオープン馬車に向かって歩くからドキドキしながら一言も喋らずにしっかりと前を見て慎重に聖人様より2歩下がって着いて歩くけど周りから歓喜の声が飛び交う。


「聖人様ー!」

「聖人様!こっち向いてー」


聖人様がオープン馬車に乗り込み、私もフランワさんも無事に乗り込み聖人様は進行方向に一人で座って対面に少し右にズレて私、左にズレてフランワさんが座り予定では馬車で街中を一周する。


「王宮前がこんな人混みなら街中はもっと人が多そうですね」

「そうですね。もっといそうですね」


フランワさんと聖人様の会話を聞いてるとスムーズに喋れてて凄いなって感心する。


「出発します」


オープン馬車がゆっくり走り出して沿道から手を振る街の人達に笑顔で応える聖人様。


「聖人様ー!!バンザーイ!!」

「珍しい獣耳の虎族様よー!」


令嬢達が黄色い悲鳴をあげ聖人様は、それを笑顔で応えて手を振る。


「聖人様のお世話係、フランワ様じゃないの?もう一人は知らないけど…」

「フランワ様ー!聖人様ー!」


沿道にいる令嬢はすぐにフランワさんの名前を呼び手を振りフランワさんも笑顔で手を振るのを見て聖人様は、すぐさま私に聞いてくる。


「ロゼリアさんの名前を呼んでくれる方はいないんですか?」

「……。主役は聖人様です!裏方の私は目立ってはいけないと思います」


と少しだけ強がってみたけどお母様は人混み苦手だしお父様は、仕事だし…キロナはこんな人混みに来てても私が見失いそうだし…やっぱり寂しい気持ちでいて沿道にふと視線を移したら心が温かくなり自然と笑顔になったのを聖人様が不思議に思ったらしく声をかける。


「ロゼリアさん?どうかしましたか?」

「いいえ。なんでもありません」


聖人様が私が見ていた方向を見るけどきっと気付かない。


「ロゼリアさんに…フランワさんはおいくつなんですか?」

「聖人様と“同い年”の26歳ですわ」

「私は19歳です」


フランワさん、どうして聖人様が“同い年”って分かったんだろ?と思ったけど、深く考えはしなく私は聖人様より7歳年下なんだと思ってやっぱり大人の男性の身体だと感じてまた聖人様の上半身が思い出してしまって慌てて頭を振った。


「何してるんですか?ロゼリアさん」

「…なんでもないです…」


聖人様が関係ない私達の年齢を何故聞いたのか意図は分からないけどそのせいで聖人様の上半身を思い出しちゃったなんて言えない…。


「手を振るのも…疲れますね」

「もう少しで休憩もありますからそこまで笑顔で手を振ってください」

「聖人様、手を下ろして少しだけ笑顔で応えたらいかがですか?」

「そうですね。その案も良いですね」


フランワさんが提案して聖人様は、笑顔で応え時折、手を振りに変更した。


「聖人様ー!」

「獣耳聖人様だっー!」


沿道で声援が大きくなり住民が全身で喜んでいるのが分かり、それほどこの国にとって聖女様・聖人様が大切なのか肌で感じ取って分かった気がした。


「ジュン…じゃなかった聖人様ー!」

「聖人様ー!頑張れよー!!」

「…恥ずかしい奴らですね」


聖人様のお友達らしき人が手を振っていて恥ずかしがってる聖人様を見てパレードはまだ始まったばかり。

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