第5話・聖人になった経緯〜ジュン目線〜

26歳にもなって両親からは「婚約者は?」「結婚は?」と急かされるけど俺の女友達で結婚したい女がいないし、結婚もしたいとは思わないし、ましてや婚約なんてしたくもない。


「……」


そんな両親も観念したのか領地でゆっくり静養中で俺は独り満喫を謳歌中で今日は久々の休みが取れたので家でゆっくりしてようと本を持ち椅子に座りさぁ、読もうとした所で外で大きな音が鳴り響く。


「おっ、次の聖女か聖人が決まったんだな」


自分には関係ない事だと思って最高の息抜きは本を読む事でゆったりと本を読んでくつろいでいたら玄関のチャイムが鳴った。


「……」


使用人か執事のカールトが出てくれると思って本を読み進めていると扉のノック音が鳴り響き扉が開いてカールトがやってきて俺に告げる。


「ジュンさま、お休みの所申し訳ございません…王宮から至急のご要件です」

「王宮から至急の要件?」


王宮がなんの用なんだ?と思いながら俺は、本を閉じ椅子から立ち上がって玄関に向かっていたけど足を止めた。


「……」


教会関係者が大勢いるし、大司教までいるなんて厄介な事しか思いつかないからニッコリ笑って早く追い出そうと思った。


「…何用ですか?大勢でコリカサン家に。両親に用事があるなら申し訳ございませんが領地に行っておりまして僕しかいないんですよね…」


大司教が一歩前に出て来て一礼をしてから俺に告げる。


「ジュン=コリカサン令息ですね?水晶様が貴方を次の聖人様にとお選びになられました」


何を言ってるのかさっぱり分からないフリをしよう。


「アハハ…。人違いだと思いますよ。似てる男なんて沢山いますし」

「いいえ。人違いではございません」


そう言って大司教は、水晶を差し出して俺に見せると現在の俺が水晶に映し出されて周りにカメラがあるんじゃないかと思うくらい鮮明に映ってる。


「聖人様にはお世話係が付き、それも水晶様がお選びになられております」


俺のお世話係を水晶が選ぶ…?そんな事初めて聞いたけど他人と四六時中一緒にいるなんて耐えられないから独り満喫してるんだから邪魔しないでほしいね。


「お断りさせていただきます。僕は聖人でもなんでもないですし、拒否します」

「聖人様。残念ながら拒否権はございません」


そう言うと大司教は呪文を唱え俺はその隙に逃げ出そうとしたら体が動かなくなった。


「なんの真似でしょうか?」

「止む終えません。拘束させて頂きます」


俺の両手、両足を縛り布で口を塞がれて無理矢理王宮に連れて行かれ、大司教が立ち会いのもとその日と次の日も拘束されたまま身支度、食事の介助、風呂を入れられて今日、俺のお世話係二名を紹介されられ二人を帰らせて今に至る。


「聖人様、お世話係がお二人で我ら安堵しました」

「…一人だと大変ですか?」

「回りきれないと思います。ロゼリア嬢は真面目でお優しい令嬢に対してフランワ嬢は自由人ですね…聖人様」


大司教が俺の顔を見てそう聞いてきたから黙る俺だが、ロゼリア嬢を見た時俺の視線を逸らさずに真っ直ぐに俺を見ていたのは興味が湧く。ただ、単に緊張していただけかも知れないが…。


「聖人様…両手、両足の拘束を解きます。」


拘束を解きながら大司教が立ち上がって頭を下げる。


「この国を護ってくださるのが貴方様でございます。これから、よろしくお願いします」


長時間拘束されていた両手、両足をブラブラさせて回して解す。


「…質問して良いですか?」

「どうぞ、聖人様」


聞きたい事はたくさんあるし、解せない部分もあるけど今は目を瞑ってやるがいつか絶対に吐かせてもらう。


「僕のお世話係をもう二人くらい増やして欲しいのですけど出来ますか?」

「申し訳ございませんがそれは出来ません」


どうせ理由は水晶が映さないからだろ?から切り込んでやる。


「前の亡くなられた聖女様にはお世話係が五人いましたよね?」


聖女様が学校に訪問に来てくれた時に五人ほどお世話係を見かけた記憶がある。


「亡くなられた聖女様にはお世話係は五人付いておりましたけど聖人様のお世話係は二人で良いと水晶様が判断しております」

「そうですか。なら仕方ないですね」

「聖人様、御用がある時はお呼び下さいませ」


一礼をして大司教に教会関係者は部屋から出て行き一人になった俺は部屋を見回した。


「…はっ、俺の私物がもう置いてあるじゃねぇーか」


大司教に連れて行かれる前まで読んでいた本がテーブルの上に置いてあり、カールトが支度をしてくれたであろうトランクも置いてあり殴りそうになるのをグッと我慢する。


「用意周到だな。人を拘束して…無理矢理連れて来て…」


殴りそうになった本を持って椅子に座り直して本を開きパラパラめくって読んでいた所を見つけて読み始めるけど考えが邪魔をして読めない。


「明日から俺は聖人か…」


今でも聖人になったなんて信じられないし、誰かの陰謀かもしれないから誰にも心を許さずに

状況を把握していこうと本を読みながら心に誓った。

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