第2話・ロゼリアの推測は聖人様…?

大きな音がパンパン鳴っていてドキドキしてきた。


「聖女様か聖人様か…どっち〜〜」

「どっちだろー??ドキドキする〜」


椅子から離れて空に上がってる花火を見つめる。


「近いうちにお披露目パレードがあるね!そこで、誰かが分かる〜」

「うんっ!そうだね!楽しみだね」


キロナと手を絡めてピョンピョンその場を飛び跳ねてるとラッカが他の侍女から耳打ちされて申し訳なさそうな顔をして伝える。


「キロナ様。婚約者様がお待ちです」

「えっ?貴女、ハーベルさんを待たせていたの?」


ハーベルさんはキロナの婚約者で獣耳で種族は犬族。耳も尻尾も薄茶色でフサフサの尻尾は触らせてもらった事があるから。


「えぇ。別に構わないでしょ。あのバカ犬」

「……」


これはまた、口喧嘩したな…と思いながらも口に出さずにキロナをハーベルさんの元に帰るように促す。


「そんな事を言っても続いてるんだから凄いと思うよ。二人を見て私も恋人…婚約者が欲しいって思うもの」

「えっ?それなら、いい令息を紹介するわよ?お見合いしちゃう??」

「んっー…」


墓穴を掘ったと思いつつ考えてキロナから視線を逸らして本が目に入り笑って断った。


「本が読めなくなっちゃうからお見合いは遠慮するわ。私は、キロナとハーベルさんの二人を見てるのが好きなの」


キロナに微笑みかける。


「ロゼリアがそう言うなら今回は大人しくあのバカ犬の所に帰るわ」

「えぇ、ハーベルさんによろしくね」

「ロゼリア、聖女様のご葬儀が分かったら手紙ちょうだい」

「えぇ。知らせるわ」


日傘を差してキロナはハーベルさんの元に帰って行ったのを見届けて椅子に座り栞を挟んでいた本を手に取り開けて読み始める。


「お嬢様、紅茶が冷めてしまったので新しいのをお淹れします」

「ありがとう、ラッカ」


ラッカに新しい紅茶を淹れてもらって飲みながら本を読み進めるとビックリした一説にたどり着きラッカに伝える。


「ラッカ!聞いて!獣耳の聖女様も聖人様もここ数百年出てないんだって」

「では、獣耳族がなったら凄い偉業ですね」

「えぇ。歴史に残るわね!」


人族、獣耳族のどっちがなっても誰がなってもこの国を護ってくださるなら構わない。


「お会い出来たら色んな話しがしたいな」

「叶うと良いですね」

「えぇ、そうね」


ラッカが答えたら強い風が吹いてページがパラパラとめくられていく。


「わわっ!強風。春一番の風かしら?」

「もう春なんですね」


季節が春になるなら大きな木の下でゆったりと本を読むのにピッタリになると風を感じていたら足音がしてその方向を向いて本に栞を再び挟んで閉じて椅子から立ち上がった。


「ロゼリア」

「お父様、お早いお帰りですね」


いつもより早い帰りで庭に直行するなんてきっと何かあったと感じた。


「…王宮の水晶が人物を映し出した」

「はい」


お父様は、喋りながら私の正面に座る。


「そこで、子爵以上の貴族にその人物の補助…お世話係をする令嬢・・の募集かける」


お父様は令嬢と言葉に出したから映し出された人物は男性・・聖人様・・・って推測するけども…聖女様もお世話係は令嬢でもあるのよね…。


「…分かりましたわ。いつ王宮に来訪すればよろしいでしょうか」


お父様に促される前に自分から立候補する言葉を出すと黙って紅茶を飲み終えるお父様の言葉を待つ。


「明後日だ。その後にお披露目パレードがある」


何十人…何百人ってきっと令嬢が来るから選ばれる事はないだろうし、推測だけど聖人様のお世話係なんて私には務まらない。


「分かりました。選ばれなくても文句は言わないで下さいね」

「言わんよ。ロゼリアなら受かると信じてるしな」


お父様の自信満々な根拠は何処から来るのかしら?と不思議に思いながら紅茶を飲み進める。


「ロゼリア」

「はい、お父様」


紅茶のカップを置きお父様を見つめる。


「私の知り合いに令息がいて…」

「会いませんよ。本を読むので忙しいです」


ニッコリ笑って本を掲げて拒否をするとお父様は、苦笑いする。


「…お断りしておくよ…」

「はい。そうして下さいね、お父様」


まだ、婚約者…恋人なんて考えられないし、本を読むので精一杯だし恋愛は後回し。そんな事より先にお父様に聞きたい事があった。


「お父様、一つ聞いて良いですか?」

「何でもいいぞ、ロゼリア」

「亡くなられた聖女様のご葬儀はいつですか?」

「ご葬儀はー」


お父様に聞いて向かった場所は聖女様が眠る墓所。


「ご葬儀が極秘に行われてしまったなんて…」

「聖女様の遺言なんだって。静かに眠りたいって…」


キロナも私も黒服を着て花を抱えて聖女様のお墓に供える。


「聖女様、今までこの国を護って下さりありがとうございます」

「聖女様、ゆっくりお眠り下さい。そして次の方が決まりましたよ」


眠ってる聖女様に二人で報告する。


「お墓も聖女様らしいね。一般の人々が眠る場所が良いって…」

「そうだね…聖女様らしいね」


二人で供えた花が夕焼けの光でキラキラしてる。


「聖女様、また来ますね」


手を合わせて祈りその場を後にした。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る