第2話

「五十鈴(いすず)ちゃーん!!!!」



「…………」



頭を抱える。その声を聞いただけで、頭痛がするのだ。



私は意識的にその声の方向とは逆の方向へと歩き始めた。しかし、私の短い足では彼の長い足に敵うはずもなく、すぐに追いつかれてしまう。





「目が合ったのに、逃げちゃうなんて、照れ隠しかな?五十鈴ちゃんかわ」



「違う、断じて違う」



否定するがそんな攻撃では彼に通用するはずもない。



荒田邦寿(あらたくにひさ)。彼曰く28歳。黒髪の刈り上げマッシュで、爽やかなイメージを放っている。警察官で生活安全課の少年係に赴任して1年目。趣味はカメラ……と本人が言っているのを聞いた。彼のことを知っている知り合いから聞くに署内でもモテるらしく、あの甘くて低い声が魅力だと評判らしい。




「つか、こんなところで何してんだよ。仕事中だろ」



「はぁ、そんなに澄んで綺麗な瞳で見つめられたら、ドキドキしちゃうなぁ」



「死んでくれる?」



―――…コイツには何を言っても無駄だと判断した。



呆れて物も言えない。

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