第4話


彩音は勉強を教えるのが上手だった。俺は真剣に勉強する気なんてさらさらなかったけれど楽しい話もあった。



特に古典文学は興味が惹かれた。書かれていることが宇宙語か?と思うぐらい紙面に走る文字を一つも理解ができない故に0点を取ったのだが、彩音の説明は分かりやすく、そしてどこかドラマティックだった。



「いい?源氏物語は日本最古の恋物語なの。ここにロマンスがギッチリ詰まってる、と思ったら大間違い。意外にドロドロしてるし、あの手この手で女を落とそうとしている光源氏はクズみたいなものなの」



と、こともなげに言う。



新谷しんたには光源氏みたいだよね」とも言われた。



「はぁ?人をクズ呼ばわりするなよ」



と俺が睨むと、彩音は頬杖をつきながら小鳥のように「ふふっ」と笑った。



「だってクズじゃん?でもそんなところも好きなんだけどね」としっかり付け加えやがったし。



「でもね、そこで光源氏たちに見初められた女の人たちは何かしらとても強い意思があるの。無くても手にいれるの。それって凄くない?」



とワクワクした目で彩音に聞かれて俺は首を捻った。



女の気持ちなんて理解したいと思ったことなんてねぇし、この先するつもりもない。



でも



彩音だけは別だ。



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